1.「頭痛篇」
さまざまな症状で救急に来る患者さん。最も重要なのは、緊急性の判断です。緊急性の高い疾患を見逃して、帰してしまうようなことだけは避けなければなりません。問診、身体所見、必要な検査を迅速に行い、疾患の鑑別を行いますが、判断の難しいケース、ときには緊急性なしと判断されてしまう場合もあります。
比較的よくみられる症例をとおして「帰してはいけない」緊急性が高い疾患の見分け方を解説します。
【症例1】3カ月前から、バンドで締め付けるような頭痛が徐々に発生した55歳の女性。
【症例2】会議中に突然頭痛が発症し、嘔吐を伴い痛みが持続している52歳女性。
この2つの症例から緊急性の有無を見極めるには、まず"OPQRST"チェックを行います。その結果、2例目はとても危険度の高い症例であることがわかり、無事に治療を受けることができました。その極意をお伝えします。
【症例3】ランニング中に頭痛と嘔気を催した34歳の男性。
頭痛は改善せず6日間持続し、さらに増悪したため来院しました。まずは前回お伝えした"OPQRST"でチェックすると、「頭痛が6日間継続し、かなり激しい痛みにまで増悪した」ことから、危険な疾患が予測されました。しかし、身体所見をみると、ほとんど異常がみられません。どうやら、典型的なものではないようですが、どのようにアプローチするのでしょうか?
【症例4】嘔吐、羞明、右半身筋力低下という随伴症状のある25歳女性。
これは、もちろん片頭痛として帰すわけにはいきません。しかしCTとMRIを施行しましたが、異常な所見はありませんでした。この症例、どのように診断したのでしょうか?
頭痛の診断に役に立つチェックリスト"OPQRST"について、さらに詳しく解説します。
2.「胸痛篇」
胸痛で救急対応といえば、ACSなど危険な疾患を迅速に鑑別しなければなりません。
【症例1】一週間前から胸痛が断続的に続く79歳の女性。
早速痛みのチェックリスト“OPQRST”でチェックすると、「ACSなどの危険な疾患はない」と判断されました。また血液、心電図、CXRを検査しても異常は認められません。さて、どんな診断がくだされるのでしょうか。
【症例2】ビールを飲んで締め付けられるような胸痛を発症した50歳の男性。
肥満、高血圧、不整脈、脂質異常、喫煙とリスクファクターがずらりと揃っています。前例のGERDにもあてはまりそうですが、まずはリスクの高いところから評価をしていきます。ところが、血液、心電図とも特にACSを疑う所見は出てきません。さて、危険な疾患がみつかりそうなこの患者にどのようにアプローチしたのでしょうか。
聖路加GENERAL<循環器内科>でお伝えした、「狭心症3つの質問」などを交えて展開します。
【症例3】仕事中に、突然胸が苦しくなり意識を失った54歳の男性。
またもやACS ? しかし、血液検査でも心電図でも異常がみつかりません。次に局所症状があったことから、頭部CTを撮りましたが、こちらも異常所見はありませんでした。異常が見つかったのは胸部単純写真からでした。左第一弓が突出していることから、大動脈造影CTを撮影したところ、明らかな解離がみられました。
【症例4】背部痛と嘔気のある56歳の女性。
夜中に痛みを発症し、痛み止めを飲んでも効果がないため救急来院。身体所見では、既往の高血圧以外は特に異常はみられませんでした。このような場合はOPQRSTで病歴を再度チェック!その結果、先ほどと同じ大動脈解離も鑑別にあがります。さて、この背部痛はどうだったのでしょうか。