感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:15

ポスト・パンデミック期:コロナ抗ウイルス薬は無効?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

2023年夏以降、コロナ感染症はポスト・パンデミックの時代に突入した。この時期に注目されているのが間断なく継続しているウイルスの遺伝子変異に対して、オミクロン株以前のパンデッミク期に開発された抗ウイルス薬が、その効果を維持しているかどうかという点である。今回論評するHammond氏らの論文は、2021年8月から2022年7月にかけて、播種しているコロナウイルスがデルタ株からオミクロン株に切り替わりつつある過渡期に集積された症例を対象としたものである。Hammond氏らはこれらの対象をもとに3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック、本邦承認:2022年2月10日、5日分の薬価:9万9,000円)に関するEPIC-SR試験(Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in Standard-Risk Patients trial)の結果を報告した。

リブテンシティ、臓器移植における難治性のCMV感染症にて承認取得/武田

 武田薬品工業は2024年6月24日付のプレスリリースにて、「リブテンシティ錠200mg」(一般名:マリバビル)について、「臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治性のサイトメガロウイルス(CMV)感染症」を効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したと発表した。  本承認は、SOLSTICE試験(海外第III相非盲検試験)および国内第III相非盲検試験の結果に基づくものである。SOLSTICE試験(リブテンシティ群235例、既存の抗CMV治療群117例)において、リブテンシティは、主要評価項目である投与開始後8週時点のCMV血症消失において既存の抗CMV治療群と比較して統計学的に有意な差が検証された。

2つの変異を持つインフルエンザウイルス、タミフルが効きにくい可能性も

 米国の保健当局が、米国内で2つの変異を併せ持つH1N1インフルエンザウイルスの感染者が2例、確認されたことを報告した。米疾病対策センター(CDC)の研究グループによると、この変異株は、ウイルス表面のタンパク質であるノイラミニダーゼの2カ所に変異(I223VとS247N)を持ち、代表的な抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(商品名タミフル)の効果を減弱させる可能性があるという。このインフルエンザウイルスの二重変異株に関する研究グループの分析結果は、CDCが発行する「Emerging Infectious Diseases」7月号に掲載された。  この最新の分析結果は、2024年3月に香港の研究グループが「The Lancet」に発表した、これら2つの変異がオセルタミビルへの耐性を高めている可能性があることを示した報告書に続くものだ。CDCの研究グループによる実験では、この二重変異株のオセルタミビルに対する感受性は、これまでのいくつかのインフルエンザウイルスの変異株と比べて最大で16倍低いことが示された。

ニルマトレルビル/リトナビル、long COVIDに対する効果が認められず

 抗ウイルス薬のパクスロビド(日本での商品名パキロビッド、一般名ニルマトレルビル/リトナビル)を長期間投与しても、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)急性期以降の罹患後症状(post-acute sequelae of SARS-CoV-2;PASC、以下、long COVID)は改善しないことが、新たな研究で明らかになった。米スタンフォード大学医学大学院感染症・地理医学分野教授のUpinder Singh氏らが、パクスロビドを製造するファイザー社の資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に6月7日掲載された。  Long COVIDは、COVID-19から回復後も他の疾患による症状としては説明のつかないさまざまな症状が3カ月以上続く状態を指し、罹患者の10〜20%が発症すると推定されている。Singh氏は、「いくつかの研究では、ウイルス粒子や分子の破片がlong COVIDの原因である可能性が示唆されている」と説明。その上で、「もしそうなら、long COVIDの症状は、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療により緩和されるのではないかとわれわれは考えた」と話す。

D型肝炎へのbulevirtide、PEG-IFN上乗せが有効/NEJM

 慢性D型肝炎に対して、bulevirtide+ペグインターフェロン アルファ-2a(PEG-IFNα-2a)の併用療法はbulevirtide単独療法と比べて、治療後24週時点のD型肝炎ウイルス(HDV)RNA陰性化率の評価において優れることが示された。フランス・パリ・シテ大学のTarik Asselah氏らが第IIb相非盲検無作為化試験の結果を報告した。bulevirtide単独療法は慢性D型肝炎患者におけるウイルス学的奏効をもたらすことが、第III相試験において示されている。また、PEG-IFNα-2aは本疾患へ適応外使用されているが、両薬の併用によりウイルス学的抑制が強化され、慢性D型肝炎患者の投与期間を限定した治療となりうるのかは明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2024年6月6日号掲載の報告。

重症敗血症へのβ-ラクタム系薬投与、持続と間欠の比較(BLING III)/JAMA

 重症敗血症患者に対するβ-ラクタム系抗菌薬による治療では、間欠投与と比較して持続投与は、90日の時点での死亡率に有意差を認めないことが、オーストラリア・Royal Brisbane and Women's HospitalのJoel M. Dulhunty氏らが実施した「BLING III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年6月12日号で報告された。  BLING III試験は、7ヵ国の104の集中治療室(ICU)で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年3月~2023年1月に参加者を登録し、2023年4月に90日間の追跡を完了した(オーストラリア・国立保健医療研究評議会などの助成を受けた)。

米国アカデミー、Long COVIDの新たな定義を発表

 米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)※は6月11日、「Long COVIDの定義:深刻な結果をもたらす慢性の全身性疾患(A Long COVID Definition A Chronic, Systemic Disease State with Profound Consequences)」を発表した。Long COVID(コロナ罹患後症状、コロナ後遺症)の定義は、これまで世界保健機構(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)などから暫定的な定義や用語が提案されていたが、共通のものは確立されていなかった。そのため、戦略準備対応局(ASPR)と保健次官補室(OASH)がNASEMに要請し、コンセンサスの取れたLong COVIDの定義が策定された。全166ページの報告書となっている。本定義は、Long COVIDの一貫した診断、記録、治療を支援するために策定された。

重症敗血症へのβ-ラクタム系薬、持続投与vs.間欠投与~メタ解析/JAMA

 敗血症または敗血症性ショックでICUに入院中の重症成人患者において、β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は間欠点滴投与と比較し、90日死亡リスクの低下と関連していることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のMohd H. Abdul-Aziz氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で示された。β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与が、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者において臨床的に重要な転帰を改善するかどうかはわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、臨床医が敗血症および敗血症性ショックの管理における標準治療として持続点滴投与を考慮すべきことを示している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。

飛行機でのコロナ感染リスク、マスクの効果が明らかに~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの拡大は、航空機の利用も主な要因の1つとなったため、各国で渡航制限が行われた。航空業界は2023年末までに回復したものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の多い時期は毎年発生しており注意が必要だ。米国・スタンフォード大学のDiana Zhao氏らは、ワクチン導入前のCOVID-19パンデミック時の民間航空機の飛行時間とSARS-CoV-2感染に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。