麻疹ウイルスをベクターとしたチクングニアウイルスワクチンの免疫原性・安全性・忍容性(解説:吉田敦氏)-975
チクングニア熱は、蚊媒介感染症として、いまや世界の大多数の地域に広まりつつある感染症である。以前にも増して大規模流行を来すようになっているが、これにはウイルスのエンベロープタンパク質が変異して媒介蚊であるネッタイシマカにより適応できるようになったことと、地球温暖化によってヒトスジシマカの生息域が拡大したことが関与している。チクングニア熱は急性熱性疾患であるが、治療法がなく、関節痛やうつ状態が後遺症として続く。一方、旅行者感染症としてウイルスを持ち帰り、帰国後に温帯地域の蚊に刺咬されることで、温帯地域の蚊がウイルスを保有することが大きな懸念となっている。実際に米国・欧州では媒介蚊が効率よくウイルスを増殖させる能力があることが判明しており、渡航者が増加している現在、その脅威も大きくなっている。このため自国内で伝播した例がないか厳重な監視が続いており、ワクチン開発は急務であるといえる。