感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:190

HIV治療の簡素化は本当に可能か?(解説:岡慎一氏)-972

死の病であったエイズ治療の歴史は、抗HIV薬の開発に合わせ変遷してきた。1987年のAZT単剤療法から90年代前半の2剤療法までは、予後の改善はなかった。しかし、1997年以降3剤併用療法になってから、予後が劇的に改善された。少なくともこの20年は、3剤併用療法をゴールデンスタンダードとしてHIVをコントロールしてきた。ところが、今回の論文は、今までの流れに逆行するように、初回治療で2剤療法をスタンダードの3剤療法と比較した無作為割り付け試験である。しかもその2剤は、ドルテグラビル+ラミブジンという飛び切りの新薬というわけでもない。結果は、非劣性が証明された。この試験の結果をもとに、初回治療の第1選択の組み合わせとしてこの2剤が推奨されるようになるかもしれない。しかし、この臨床試験では、ラミブジン耐性ウイルスを持つ患者は除外されていた。危ない結果である。本当に危ない結果である。

多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。

新規抗インフルエンザ薬の位置付け

 インフルエンザの流行期に備え、塩野義製薬が「インフルエンザ治療の最前線」と題したメディアセミナーを都内にて開催した。本講演では、廣津 伸夫氏(廣津医院 院長)が、「抗インフルエンザウイルス薬『ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)』の臨床経験を通じた知見」について語り、「従来の治療薬と同等の立場で選択されるべき治療薬だ」との見解を示した。  はじめに、最新のインフルエンザ治療に関する自身の研究成果が紹介された。本人・家族における過去のインフルエンザ感染既往は、ワクチン接種後の抗体価上昇に良好に影響し、ウイルスの残存時間を短縮するという。既存の抗インフルエンザウイルス薬であるノイラミニダーゼ(NA)阻害薬は、薬剤によってウイルスの残存時間への影響が異なり、ウイルス残存時間が短いNA阻害薬ほど、家族内感染率を下げたと報告された。

HPV陽性中咽頭がんへのセツキシマブ、5年生存率と毒性は/Lancet

 HPV陽性中咽頭がんについて、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに対し、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)ともに劣性であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaura L. Gillison氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験「RTOG 1016試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。放射線療法+高用量(100mg/m2)シスプラチンによるHPV陽性中咽頭がん治療の生存率は高いが(3年生存率はHPV陽性82.4%、HPV陰性57.1%)、若年患者における生存率の高さが、治療関連の後発性毒性への懸念を増している。シスプラチンの代わりにセツキシマブを併用したレジメンが、高い生存率を維持し治療関連の毒性を低下するかは不明であった。

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。

ARTでリスク増、HIV患者の奇異性結核関連IRISの予防には?/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)は、結核菌感染を併発したCD4低値のHIV感染患者の死亡率を抑制するが、奇異性結核関連免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)のリスクを増加させる。南アフリカ共和国・ケープタウン大学のGraeme Meintjes氏らは、奇異性結核関連IRISの予防にprednisoneの4週間投与が有効であり、重症感染症やがんのリスクの上昇は認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年11月15日号に掲載された。奇異性結核関連IRISは、抗結核薬の投与を受けたHIV患者に対し、早期ARTを開始後に発現する結核の再発または新たな炎症所見で特徴付けられる免疫病理学的応答である。観察研究の統合解析では、HIV患者の18%にみられるとされる。

ネットワークメタ解析で評価した帯状疱疹ワクチンの有効性と安全性(解説:小金丸博氏)-959

帯状疱疹は、神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化でおこる皮膚感染症である。一生涯で4分の1の人が発症するリスクがあり、発症者の3分の2は50歳以上である。高齢になるほど罹患率や死亡率が上昇し、帯状疱疹後神経痛といった日常生活に支障を来す合併症もあるため、ワクチンによる予防が推奨される。帯状疱疹を予防するためのワクチンには、弱毒生ワクチンとアジュバント組換え型サブユニットワクチンの2種類がある。多くの先進国では50歳以上の成人に対して弱毒生ワクチンが導入されているが、70歳以上では有効性が低下することや、免疫不全者に対して接種できないなどの問題点があった。近年になって、カナダ、米国、ヨーロッパ、日本で新しいワクチンであるアジュバント組換え型サブユニットワクチンが認可されてきているが、弱毒生ワクチンとアジュバンド組換え型サブユニットワクチンの有効性をhead-to-headで直接比較した研究はない。

ART未治療HIV-1感染患者へのドルテグラビル+ラミブジン/Lancet

 抗レトロウイルス療法(ART)歴のないHIV-1感染成人患者において、ドルテグラビル+ラミブジンによる48週間の治療は、ガイドラインで推奨される3剤レジメンに対して非劣性であることが検証された。アルゼンチン・ブエノスアイレス大学のPedro Cahn氏らによる多施設共同無作為化二重盲検非劣性第III相試験「GEMINI-1」および「GEMINI-2」の結果で、忍容性プロファイルは類似しており、著者は「2剤レジメンはHIV-1感染患者の初回治療として支持される」とまとめている。2剤レジメンは、現在の標準治療である3剤以上を併用するレジメンと比較して、長期にわたる薬物曝露やARTの毒性を減少させる可能性があると考えられていた。Lancet誌オンライン版2018年11月9日号掲載の報告。

チクングニア熱ワクチン、安全性と有効性を確認/Lancet

 麻疹ウイルスベクターを用いた弱毒生チクングニアワクチン(MV-CHIK)は、優れた安全性・忍容性と、麻疹ウイルスに対する既存免疫と独立した良好な免疫原性を発揮することが示された。ドイツ・Rostock University Medical CenterのEmil C. Reisinger氏らによる、MV-CHIKの第II相の無作為化二重盲検プラセボ/実薬対照試験の結果で、著者は、「MV-CHIKは、世界的に懸念されている新興感染症チクングニア熱の予防ワクチン候補として有望である」とまとめている。チクングニア熱は新興ウイルス性疾患で、公衆衛生上の大きな脅威となっている。チクングニアウイルスに対する承認されたワクチンはなく、治療は対症療法に限られていた。Lancet誌オンライン版2018年11月5日号掲載の報告。

「かぜには抗菌薬が効く」と認識する患者が約半数、どう対応すべきか

 一般市民対象の抗菌薬に関する意識調査の結果、約半数が「かぜやインフルエンザなどのウイルス性疾患に対して抗菌薬が効く」と誤った認識をしていることが明らかになった。 AMR臨床リファレンスセンターは10月30日、「抗菌薬意識調査2018」の結果を公表し、「薬剤耐性(AMR)対策の現状と取り組み 2018」と題したメディアセミナーを開催した。セミナーでは大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院 副院長/国際感染症センター長/AMR臨床リファレンスセンター長)、具 芳明氏(AMR臨床リファレンスセンター 情報‐教育支援室長)らが登壇し、意識調査結果や抗菌薬使用の現状などについて講演した。