感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:195

三日熱マラリアの再発予防にtafenoquine単回投与は有効か?/NEJM

 三日熱マラリア原虫(P.vivax)マラリアの患者に対し、tafenoquineの単回投与は、再発予防に関して、プリマキン14日間投与に対する非劣性は示されなかった。グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)活性が正常値の患者において、ヘモグロビン値低下の有意差は認められなかった。ペルー・Peruana Cayetano Heredia大学のA. Llanos-Cuentas氏らが行った、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験の結果で、著者は「tafenoquineはP.vivaxマラリアの根治治療(radical cure)に有効ではあるが、プリマキンに対する非劣性は示されなかった」とまとめている。tafenoquineの単回投与は、“根治治療”と称されるP.vivax血症と休眠体の消失により、再発予防と関連することが示されていた。NEJM誌2019年1月17日号掲載の報告

病院の水系による感染症の解析と克服は難しい課題である(解説:吉田敦氏)-995

医療関連感染の中で、水を介した感染症を生じる微生物として、レジオネラや緑膿菌が有名である。しかしながらこの他にもアシネトバクターやステノトロホモナスといったブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌や非結核性抗酸菌が知られており、院内・施設内の水道・水系を介してこれらが集団発生した例も報告されている。今回、11年にわたり単一施設で分離され続けていたブドウ糖非発酵菌Sphingomonas koreensisが、院内の水系を介していたことが、全ゲノム解析を含む詳細な分子疫学的解析によって明らかにされた。なおSphingomonasは細胞壁にスフィンゴ脂質を含むことから本邦の薮内 英子らによって属として提唱されたもので、現在127菌種が含まれる。またS. koreensisは2001年に新種として発表されたが、これまで感染例として報告されたのは髄膜炎などごく少数にすぎない。

集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。

フルオロキノロン系薬に大動脈瘤・解離に関する使用上の注意改訂指示

 フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書について、2019年1月10日、厚生労働省より使用上の注意の改訂指示が発出された。フルオロキノロン系抗菌薬と大動脈瘤および大動脈解離との関連性を示唆する疫学研究や非臨床試験の文献が報告されたことによるもので、改訂の概要は以下のとおり。 1.「慎重投与」の項に、「大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者」を追記する。

インフルエンザ報告数、前週から倍増

 2018年第50週(12月10~16日)のインフルエンザ報告数が、21日、厚生労働省より発表された。全国約5,000の定点当たり報告数は3.35(患者報告数1万6,589人)となり、前週(1.70)のほぼ2倍となった。  都道府県別では、北海道(9.59)が最も多く、愛知県(8.41)、香川県(7.13)、奈良県(5.20)、三重県(5.04)と続き、46都道府県で前週の報告数より増加した。警報レベルを超えている保健所がある都道府県は3府県(北海道、兵庫県、大分県)であった。

不整脈デバイスの感染防止に抗菌薬追加投与は有効か(PADIT試験)【Dr.河田pick up】

 植込み型の医療機器の感染は重大な結果へとつながりうる。心調律デバイスの場合、術前のセファゾリンが標準的な予防的抗菌薬であるが、デバイス感染症によくみられるメチシリン耐性グラム陽性球菌には有効でない。また、術中よく行われる抗菌薬によるポケット内の洗浄についても明確なエビデンスはない。この研究は、標準的なセファゾリンに加えて、周術期に抗菌薬を追加投与することの有効性を評価することを目的として行われた。なお、本研究のユニークな点は患者ではなく、施設ごとに無作為化を行っている点である。

アトピー性皮膚炎患者、皮膚以外の感染症リスク上昇

 アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚への細菌定着や感染の増加、皮膚以外の感染症の多数のリスク因子に関連している。しかし、ADが皮膚以外の感染症の増加と関連しているかどうかについては、これまでの研究では相反する結果が得られていた。米国・ノースウェスタン大学のLinda Serrano氏らはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、AD患者は、皮膚以外の感染症リスクが高いことが明らかとなった。著者は「今後、これらの関連を確認し、その機序を明らかにする必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年11月21日号掲載の報告。

薬剤耐性菌の拡大を防ぐ「かぜ診療」最前線

 薬剤耐性(AMR)の問題は、これに起因する死亡者数が2050年には1,000万人に上ると推定されている喫緊の課題だ。2018年12月8日、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは抗菌薬の適正使用を目指し「かぜ診療ブラッシュアップコース」を都内で開催した。  「適切なかぜ診療を行う際に知っておきたいこと」と題し、藤友結実子氏(国立国際医療センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)が、一般市民の抗菌薬に関する意識調査の結果を紹介した。抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある割合は94.2%だが、効果に関しては、71.9%が「細菌が増えるのを抑える」と正しく認識している一方、40.9%「熱を下げる」、39.9%が「痛みを抑える」とも回答している。

若年者に増加しているヒトパピローマウイルス陽性中咽頭がんに対する標準的放射線化学治療(解説:上村直実氏)-976

中咽頭がんは頭頸部がんの1つで、日本では年間の罹患者数が数千人であるのに対して、米国では毎年5万人が罹患し1万人が死亡する疾患である。生命予後とともに嚥下や発生などの機能の温存が重要で、手術療法とともに放射線化学療法が用いられる機会が多いのが特徴的である。近年、中咽頭がんの原因の1つとしてヒトパピローマウイルス(HPV)が同定された後、HPV関連(p16陽性)がんと非関連(p16陰性)がんに大別され、前者は後者に比べて若年者に多く、予後が良いのが特徴であり、罹患者が急増していることで注目されている。

麻疹ウイルスをベクターとしたチクングニアウイルスワクチンの免疫原性・安全性・忍容性(解説:吉田敦氏)-975

チクングニア熱は、蚊媒介感染症として、いまや世界の大多数の地域に広まりつつある感染症である。以前にも増して大規模流行を来すようになっているが、これにはウイルスのエンベロープタンパク質が変異して媒介蚊であるネッタイシマカにより適応できるようになったことと、地球温暖化によってヒトスジシマカの生息域が拡大したことが関与している。チクングニア熱は急性熱性疾患であるが、治療法がなく、関節痛やうつ状態が後遺症として続く。一方、旅行者感染症としてウイルスを持ち帰り、帰国後に温帯地域の蚊に刺咬されることで、温帯地域の蚊がウイルスを保有することが大きな懸念となっている。実際に米国・欧州では媒介蚊が効率よくウイルスを増殖させる能力があることが判明しており、渡航者が増加している現在、その脅威も大きくなっている。このため自国内で伝播した例がないか厳重な監視が続いており、ワクチン開発は急務であるといえる。