腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:12

免疫抑制患者、ブースター接種50日以降に入院・死亡リスク増/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株とオミクロン変異株が優勢であった時期に、ワクチンの初回および追加接種を受けた集団では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院や死亡の発生率が低く、複数回接種により重症COVID-19関連疾患の予防効果がもたらされた可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJ. Daniel Kelly氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年9月26日号で報告された。

単回の中強度運動は腎血流量や腎機能を低下させない

 単回の中強度運動は腎血流量や腎機能に影響を及ぼさないことを示すデータが報告された。福岡大学スポーツ科学部の川上翔太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Physiological Reports」に8月4日掲載された。  運動による代謝性疾患や心血管疾患などに対する予防・治療上のメリットは、既に強固なエビデンスで裏付けられている。ただし、運動によって筋肉への血流が増えて腎血流量が低下したり、運動後に尿蛋白が陽性になったりすることから、腎臓病の治療において運動はあまり強く推奨されず、むしろ運動を控える指導が行われることがあった。一方で、近年の研究で運動は慢性腎臓病(CKD)患者の蛋白尿を悪化させない可能性が報告されており、運動がCKD患者に対する治療の選択肢となり得る。しかしながら、CKD患者にとって安全で効果的な運動条件は整備されておらず、運動療法の基準を確立する必要性が高まっている。

教育研修プログラムとして高く評価(解説:野間重孝氏)

現在ヨード造影剤を用いた検査・治療手技は日常診療で欠かすことのできない存在となっている。その際問題になるのが造影剤による急性腎障害(CIN)であり、ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上、または前値より25%以上上昇した場合と定義される。CINは院内発症の急性腎障害(AKI)の10~13%に及ぶと考えられ、多くのAKIが不可逆的であるのと同様にCINもその多くが不可逆的であり、その後の治療の大きな障壁となる。検査・治療に当たる医師は最大限の注意を払うことが求められ、裏付けとなる十分な知識・経験と技術が求められるところとなる。本研究は非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンションを施行する心臓専門医に対して教育、造影剤投与量および血行力学的に誘導された輸液目標に対するコンピュータによる臨床的意志決定支援、監査とフィードバックを行い、介入前後の成績を比較検討したものである。この一連の報告は、研究というより教育・研修プログラムの効果判定とその報告と考えるべきで、その意味から今回の試みは成功だったと評価されると考えられる。

SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬の処方率、人種・民族間で格差/JAMA

 2019~20年の米国における2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の処方率は低く、白人や非ヒスパニック/ラテン系と比較して、とくに他の人種やヒスパニック/ラテン系の患者で処方のオッズ比が有意に低いことを、米国・カリフォルニア大学のJulio A. Lamprea-Montealegre氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)の大規模コホートデータ「Corporate Data Warehouse:CDW」を用いた横断研究の結果、報告した。2型糖尿病に対する新しい治療薬は、心血管疾患や慢性腎臓病の進行リスクを低減することができるが、これらの薬剤が人種・民族にかかわらず公平に処方されているかどうかは、十分な評価がなされていなかった。著者は、「これらの処方率の差の背景にある要因や、臨床転帰の差との関連性を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年9月6日号掲載の報告。

冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。

腎結石の再発予防のための食事とは

 腎結石の痛みを経験したことのある人なら、目がくらむほどの激痛を二度とは経験したくないと思うことだろう。腎結石の再発予防に役立つ可能性のある食事スタイルが報告された。米メイヨー・クリニックのJohn Lieske氏らが行った前向き研究の結果であり、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」に8月1日掲載された。  Lieske氏らは、腎結石の再発に食事スタイルが関与しているか否かを検討するために、2009年1月~2018年8月に腎結石の痛みのために同院で治療を受けた411人と、比較対照群384人の食物摂取状況を把握した上で、4.1年(中央値)追跡した。その結果、腎結石既往群の73人が追跡期間中に症状を再発した。

低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。 . 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。

ケレンディア、2型糖尿病を合併するCKD患者に関する最新データ発表/バイエル

 バイエル薬品の2022年8月30日付のプレスリリースによると、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2022において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者(CKD)の死亡率にケレンディア(一般名:フィネレノン)が及ぼす影響を示した最新データが発表された。  2型糖尿病を合併するCKD患者を対象としたフィネレノン第III相臨床試験プログラムは、FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの2つの試験で構成されている。この2つの試験を含むFIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000名以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第III相臨床試験プログラムである。FIDELITYの全体集団では、全死因死亡および心血管死に対するフィネレノンの効果は統計学的有意差にわずかに至らなかったものの、FIDELITYの事前規定した探索的on-treatment解析から得られた最新データによると、本集団ではフィネレノン群がプラセボ群と比べ、全死因死亡の発現率(ハザード比[HR]:0.82[95%信頼区間[CI]:0.70~0.96]、p=0.014)および心血管死の発現率(HR:0.82[95%CI:0.67~0.99]、p=0.040)を有意に減少させることが示された。追跡期間4年時点での心血管死までの時間に関するイベント確率解析では、ベースライン時点の推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に関係なくフィネレノンの有用性は一貫しており、eGFRが60mL/min/1.73m2以上の場合、プラセボと比べフィネレノンのより顕著な効果が示された。

4つのステップで糖尿病治療薬を判断/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、9月5日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を発表した。  このアリゴリズムは2型糖尿病治療の適正化を目的に、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して作成されている。  具体的には、「Step 1」として病態に応じた薬剤選択、「Step 2」として安全性への配慮、「Step 3」としてAdditional benefitsを考慮するべき併存疾患をあげ、「Step 4」では考慮すべき患者背景をあげ、薬剤を選択するアルゴリズムになっている。

固形がんの第I相試験、20年間で奏効率2倍に/Lancet

 2000~19年に行われた固形がんに関する第I相臨床試験の奏効率は、治療関連の死亡率を増大することなく2倍近くになっていることが判明した。一方で、同期間の奏効率の改善は、がんの種類、治療薬、試験デザインなどさまざまな要因によるばらつきも認められたという。米国・国立がん研究所(NCI)のDai Chihara氏らが、がん治療評価研究プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program:CTEP)の患者データを分析し明らかにした。Lancet誌2022年8月13日号掲載の報告。  研究グループは、2000年1月1日~2019年5月31日に行われたNCIが資金を提供した研究者主導の固形がんに関する第I相臨床試験のCTEPから患者データを集めて分析した。治療関連死(「おそらく」・「十中八九」・「明確に」治療に起因するGrade5の毒性による)、治療中の全死亡(がん種にかかわらずプロトコール治療中の死亡)、Grade3-4の毒性、全奏効の程度(完全奏効および部分奏効)、対象期間中(2000~05年、2006~12年、2013~19年)の完全奏効率、および経時的傾向を評価した。