尿酸値が低い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は重症化リスクが高く、そのメカニズムとして、尿酸値の低さのために炎症反応が亢進していることの関与が想定されるとする研究結果が報告された。大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の藏城雅文氏らの研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に3月10日掲載された。
尿酸値は高すぎると痛風などのリスクとなるが、一方で尿酸には強力な抗酸化作用があるため、低すぎることでも腎機能低下などのリスクが上昇することが分かっている。またCOVID-19パンデミック以降は、尿酸値の低さとCOVID-19重症化リスクの高さとの関連を示唆する研究結果も報告されている。ただし、そのメカニズムについてはまだ不明点が多い。藏城氏らは、COVID-19重症化リスク因子である、炎症、肺胞損傷、凝固能亢進という3点と、尿酸値の低さとの関連に焦点を当て、患者データを用いた後方視的観察研究を行った。
研究対象は、2020年10月~2021年5月に大阪市立十三市民病院に入院した、非重症COVID-19患者から、高尿酸血症(7mg/dL以上)、三次医療機関での治療後に転院搬送された元重症患者、免疫抑制薬投与中、妊婦、自主退院、データ欠落に該当する患者を除外した488人。主な特徴は、年齢が中央値76歳(四分位範囲57~82)、男性52.0%で、尿酸値は4.4mg/dL(同3.6~5.4)で11.1%が尿酸降下薬を服用していた。炎症はCRPで評価し入院時に3.33mg/dL(0.58~6.77)、肺胞損傷を表すKL-6は252U/mL(198~337)、凝固能亢進を表すD-ダイマーは0.8μg/mL(0.6~1.2)だった。
入院後にICU入室や人工呼吸管理を要した場合を重症化症例と定義すると、19.5%が該当した。入院から重症COVID-19に進行するまでの期間は中央値7日(4~14)だった。
年齢や性別、BMI、eGFR、喫煙、基礎疾患などと尿酸値を調整する多変量解析の結果、重症化に独立して関連する因子として、高齢〔10歳ごとにハザード比(HR)1.342(95%信頼区間1.096~1.642)〕、男性〔女性に対してHR2.103(1.232~3.589)〕とともに、尿酸値の低さ〔-1mg/dLごとにHR1.279(1.021~1.602)〕が抽出された。
また、尿酸値は対数変換したCRP(logCRP)との間に有意な負の相関関係があり(r=-0.165、P<0.001)、尿酸値が低いほど炎症が亢進していることが明らかになった。それに対して、logKL-6やlogD-ダイマーは尿酸値との有意な相関は観察されなかった。
次に、前記の多変量解析の調整因子に、尿酸値、logCRP、logKL-6、logD-ダイマーをそれぞれ単独で追加して、各指標が1標準偏差(SD)異なる場合の重症化リスクを検討。その結果、尿酸値が1SD低いと重症化リスクは約1.3倍になり〔標準化ハザード比1.337(1.025~1.743)〕、logCRPが1SD高いと重症化リスクは約2倍〔同2.079(1.389~3.113)〕、logKL-6は1SD高いごとに約1.3倍〔同1.292(1.040~1.606)〕となった。logD-ダイマーは有意な関連が示されなかった。
続いて、尿酸値と同時にlogCRP、logKL-6、logD-ダイマーを調整因子として追加。すると、logKL-6やlogD-ダイマーを追加した場合には、尿酸値の標準化ハザード比に有意な変化を認めなかった。それに対して、logCRPを追加した場合は、尿酸値の標準化ハザード比が1.233(95%信頼区間0.941~1.616)と非有意になり、logCRPを追加しない場合と結果が有意に異なっていた(P=0.041)。
以上の結果の総括として著者らは、「高尿酸血症に該当しない場合、尿酸値が低いことが、炎症反応の亢進を介してCOVID-19重症化のリスクとなることが示唆された」と結論付けている。そのメカニズムについては既報論文を基に、「尿酸値が低い場合、尿酸の持つ抗酸化作用が低下し、活性酸素によって生じる炎症の抑制が十分になされないためではないか」と考察を述べている。
[2023年5月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら