神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

明晰な頭脳の維持には骨格筋量の維持が重要

 筋肉を維持することは認知症の予防に役立つ方法の一つである可能性があるようだ。新たな研究で、高齢者の側頭筋の減少はアルツハイマー病(AD)のリスク上昇と関連していることが示された。この研究を実施した米ジョンズ・ホプキンス大学医学部神経学教授のMarilyn Albert氏は、「骨格筋の少ない高齢者は、他の既知のリスク因子を考慮しても、認知症リスクが約60%高いことが明らかになった」と述べている。この研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2024、12月1〜5日、米シカゴ)で発表された。

日本のメモリークリニックにおける聴覚障害や社会的関係とBPSDとの関連性

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症患者とその介護者のQOLに悪影響を及ぼす。そのため、BPSDを予防するための修正可能なリスク因子を特定することは、非常に重要である。滋賀医科大学の田中 早貴氏らは、聴覚障害、社会的関係とBPSDとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。Psychogeriatrics誌2025年1月号の報告。  対象は、2023年7月~2024年3月に日本のメモリークリニックを受診した患者179例。純音聴力検査および質問票によるインタビューを行い、医療記録をレビューした。聴覚障害の定義は、聴力がより良好な耳における純音聴力検査で測定された平均聴力レベル40dB以上とした。BPSDの有無および重症度の評価には、BPSD25Qベースの質問票を用いた。交絡因子で調整したのち、聴覚障害、社会的関係指標とBPSDの有無および重症度との関連を評価するため、部分回帰係数を算出する多重回帰分析を行った。

日本におけるレカネマブ治療施設の現状〜北海道のいま

 認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、認知症患者の70%を占める。日本では、2018年に65歳以上の高齢者500万人以上が認知症に罹患しており、この年齢層における患者数は2045年までに25〜30%増加すると予想されている。2023年、新たに認知症治療薬として承認されたレカネマブは、今後ますます使用されると予想されている。しかし、レカネマブの使用では、アミロイドPETスキャンやMRIモニタリングなどの厳格なマネジメントが必要とされ、専門施設の拡大が求められるため、治療施設の不足や治療アクセスの悪さに関する懸念が課題となる。北海道大学の大橋 和貴氏らは、地理情報システムデータを用いて、北海道におけるレカネマブの空間的アクセスの評価を行った。Health Services Insights誌2024年11月18日号の報告。

アルツハイマー病最新治療薬の認知機能改善に対する有効性比較

 近年、新たなアルツハイマー病治療薬が登場し、臨床試験において認知機能および臨床症状に対する有望な結果が得られている。しかし、多くの薬剤の中から最も効果的な治療オプションを選択することについては、依然として議論が続いている。中国・西安交通大学のWeili Cao氏らは、新規アルツハイマー病治療薬の有効性を比較し、それらの薬剤をランク付けするために、ネットワークメタ解析を実施した。Neuroscience誌2025年1月号の報告。

ATTR型心アミロイドーシスにおいてブトリシランは全死亡を低下させQOLを維持する(解説:原田和昌氏)

ATTRアミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)がアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することで引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。ATTR型心アミロイドーシスの治療薬としては、TTR安定化薬のタファミジスが承認されている(ATTR-ACT試験)。また、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)の適応を取得しているsiRNA静脈注射剤のパチシラン(3週に1回投与)により、ATTR型心アミロイドーシス患者の12ヵ月時の機能的能力が維持されることが報告された(APOLLO-B試験)。さらに、高親和性TTR安定化薬であるacoramidisのATTR型心アミロイドーシスに対する有効性が報告されている(ATTRibute-CM試験)。

Long COVIDの神経症状は高齢者よりも若・中年層に現れやすい

 新たな研究によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)のうち、重篤な神経症状は、高齢者よりも若年層や中年層の人に現れやすいことが明らかになった。米ノースウェスタン・メディスン総合COVID-19センターの共同所長を務めるIgor Koralnik氏らによるこの研究結果は、「Annals of Neurology」に11月22日掲載された。  Long COVIDの神経症状は、頭痛、しびれやうずき、嗅覚障害や味覚障害、目のかすみ、抑うつ、不安、不眠、倦怠感、認知機能の低下などである。論文の上席著者であるKoralnik氏は、「COVID-19による死亡者数は減少し続けているが、人々は依然としてウイルスに繰り返し感染し、その過程でlong COVIDを発症する可能性がある」と指摘する。同氏は、「long COVIDは、患者の生活の質(QOL)に変化を引き起こしている。ワクチン接種や追加接種を受けている人でも、COVID-19患者の約30%にlong COVIDの何らかの症状が現れる」と話す。

アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール長期延長試験

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性が、12週間のランダム化比較試験において実証された。しかし、長期的な有用性については、これまで十分に検証されていなかった。米国・大塚製薬のSaloni Behl氏らは、ブレクスピプラゾールの長期的な安全性および忍容性を評価するため、長期延長試験の結果を報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年11月号の報告。

片頭痛治療をためらう理由とは〜OVERCOME研究

 片頭痛の治療法は、さまざまであるにもかかわらず、片頭痛患者の多くは、医療に消極的であり、診断および効果的な治療機会を逃し、疾病負担を軽減する機会を喪失している可能性がある。患者が片頭痛治療を躊躇する理由を明らかにすることは、医療専門家や支援者の障壁に対処し、アウトカム改善につながると考えられる。米国・バーモント大学のRobert E. Shapiro氏らは、片頭痛治療を躊躇することと関連する因子を特定するため、米国大規模サンプルを対象に、調査を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2024年11月2日号の報告。

心肺フィットネスの向上は認知症リスクの軽減につながる

 認知症リスクが高い遺伝子を持つ人は、定期的な運動により心肺フィットネス(cardiorespiratory fitness;CRF、心肺持久力とも呼ばれる)を向上させることで、認知症リスクを軽減できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)老化研究センターのWeili Xu氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に11月19日掲載された。  CRFとは、運動中の筋肉に酸素を供給する体の循環器系と呼吸器系の能力のことを指す。この能力は、20代から筋肉量の減少に伴い低下し始め、その後、加速度的に低下する。70代になると、CRFは10年当たり20%以上低下する。低CRFは、あらゆる原因による死亡や、脳卒中や心筋梗塞などの心臓関連イベントの強力な予測因子である。

アルツハイマー病に伴うアジテーションが医療負担に及ぼす影響

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションは、一般的な症状であるが、これに伴う医療負担はよくわかっていない。米国・Inovalon InsightsのChristie Teigland氏らは、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者とアジテーションのない患者におけるベースライン特性、医療資源の利用、コストの評価を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2024年10月29日号の報告。  対象は、2009〜16年のメディケア有料請求データベースよりアルツハイマー病および認知症で30日以上の間隔で2件以上の請求があり、診断6ヵ月前および12ヵ月後に医療/薬局保険に継続加入していたメディケア受給者。重度の精神疾患患者は除外した。アジテーションの有無により2つの患者コホートを定義し、記述的探索分析により患者の特徴、医療資源の利用、コストの比較を行った。