神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

全身型重症筋無力症の治療薬ニポカリマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2025年11月12日に全身型重症筋無力症の治療薬として、ヒトFcRn阻害モノクローナル抗体ニポカリマブ(商品名:アイマービー)を発売した。  重症筋無力症(MG)は、免疫系が誤って各種の抗体(抗アセチルコリン受容体抗体、抗筋特異的キナーゼ抗体など)を産生する自己抗体疾患。神経筋接合部のタンパク質を標的として、正常な神経筋シグナル伝達を遮断または障害することで、筋収縮を障害もしくは妨げる。MGは全世界で70万人の患者がいると推定され性差、年齢、人種差を問わず発症するが、若い女性と高齢の男性に最も多くみられる。初発症状は眼症状であることが多く、MG患者の85%は、その後、全身型重症筋無力症(gMG)に進行する。gMGの主な症状は、重度の骨格筋の筋力低下、発話困難、嚥下困難であり、わが国には約2万3,000人のgMG患者がいると推定されている。

SMA治療薬ヌシネルセンの高用量剤形を発売/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬であるヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)について、2025年11月12日薬価収載と同時にわが国で販売を開始した。  高用量投与レジメンについては、2025年9月19日に新用量医薬品/剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)に係る医薬品として承認を取得していた。なお、高用量投与レジメンでの剤形追加は、承認、販売ともにわが国が世界で最初となる。  SMAは、主に乳児期から小児期に発症する進行性の神経筋疾患で、運動神経細胞の変性・消失により筋力低下や筋萎縮を引き起こす。SMAは遺伝性疾患であり、SMN1遺伝子の欠失や変異が主な原因とされている。わが国を含む世界各国で患者が報告され、重症度や発症年齢によりI~IV型に分類される。SMAは、近年、治療法の進歩により患者さんの予後は大きく改善しているが、依然として「筋力の改善」、「呼吸・嚥下機能の改善」など、満たされていない医療ニーズが存在する。

スタチンでケモブレインを防げる?

 最も一般的なコレステロール治療薬であるスタチン系薬剤(以下、スタチン)が、がん患者を「ケモブレイン」から守るのに役立つかもしれない。新たな研究で、スタチンは乳がんやリンパ腫の患者の認知機能を最大2年間保護する可能性のあることが示された。米バージニア・コモンウェルス大学パウリー心臓センターのPamela Jill Grizzard氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月21日掲載された。  Grizzard氏は、「がん治療は患者を衰弱させる可能性があり、化学療法による認知機能の低下は治療終了後も長期間続くことがある」と話す。その上で、「この研究結果は、スタチン投与群に割り付けられたがん患者において、治療開始から2年間にわたり認知機能に予想外の改善傾向が認められたことを示している。がん治療中に知性を守ることは、心臓を守るのと同じくらい重要だ」と述べている。

アルツハイマー病に伴うアジテーションを軽減する修正可能な要因は

 アルツハイマー病患者の興奮症状に影響を与える介護者、環境、個々の因子を包括的に評価し、修正可能な因子を特定するため、中国・上海交通大学のXinyi Qian氏らは、本研究を実施した。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2025年9月22日号の報告。  対象は、2022年10月〜2023年6月に上海精神衛生センターより募集した、参加者220例(アルツハイマー病患者110例とその介護者)。対象患者から、人口統計学的情報、生活習慣、病歴、ミニメンタルステート検査(MMSE)や老年期うつ病評価尺度(GDS)などの神経心理学的検査のデータを収集した。介護者から、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)、環境要因に関する質問票、ハミルトンうつ病評価尺度およびハミルトン不安評価尺度などの感情状態の評価に関するデータを収集した。アジテーション症状の重症度評価には、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いた。グループ間の差および潜在的な要因と興奮症状との関連性についても分析した。

頭痛は妊娠計画に影響を及ぼすのか?

 頭痛は、生殖年齢の人にとって社会経済的な負担となる一般的な神経疾患である。しかし、妊娠計画への影響についてはほとんど知られていない。埼玉医科大学の勝木 将人氏らは、日本における学齢期の子供を持つ保護者を対象に、頭痛の特徴と妊娠計画との関連性を調査した。The Journal of Headache and Pain誌2025年7月4日号の報告。  2024年に新潟県燕市の学校に通う生徒の保護者を対象に、学校を拠点としたオンライン調査をプロスペクティブコホートに実施した。調査項目には、年齢、性別、頭痛の特徴、急性期治療薬および予防薬の使用状況、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの急性期治療薬の使用日数(AMD)、頭痛影響テスト(HIT-6)、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)、子供の数を含めた。また、「頭痛のために妊娠を避けているまたは避けたことがありますか」という質問を通して、頭痛が妊娠計画に及ぼす影響についても調査した。この質問に対し「はい」と回答した人は、妊娠回避群と定義された。

水分摂取量が日本人の認知症リスクに及ぼす影響

 適切な水分摂取は、高齢者の認知機能の維持に不可欠である。しかし、水分摂取量の促進を推奨する前に、解決しなければならない課題が残存している。まず、水分摂取量と認知機能の改善との関係は線形であるのか、そしてもう1つは、この関連性を媒介する根本的なメカニズムは何かという点である。これらの課題を解決するため、北海道・北斗病院の保子 英之氏らは、日本人高齢者を対象に、水分摂取量が認知症リスクに及ぼす影響を検討した。PloS One誌2025年10月6日号の報告。  対象は、高齢者向け介護施設に入所し、看護を受けている日本人高齢者33例。水分摂取量は、日常的な臨床診療の一環として記録した。認知機能は、入所期間中にミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)を用いて2回評価した。さらに、超音波検査を用いて左右の総頸動脈の血流を測定し、約82.6±14.9日の間隔で評価した。除脂肪体重(LBM)当たりの水分摂取量、MMSE-Jスコアの変化、超音波検査パラメーター間の関係は、ノンパラメトリックブートストラップ法を用いたスピアマンの線形相関分析により解析した。

帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡リスクの低減にも有効

 帯状疱疹ワクチンは中年や高齢者を厄介な発疹から守るだけではないようだ。新たな研究で、このワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らによるこの研究結果は、米国感染症学会年次総会(IDWeek 2025、10月19〜22日、米アトランタ)で発表された。  米疾病対策センター(CDC)によると、米国では3人に1人が帯状疱疹に罹患することから、現在、50歳以上の成人には帯状疱疹ワクチンの2回接種が推奨されている。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症するが、CDCは、ワクチン接種に当たり水痘罹患歴を確認する必要はないとしている。1980年以前に生まれた米国人の99%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからだ。

日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

ホスピスでよく使われる薬は認知症患者の死亡リスクを増加させる

 ホスピスでケアを受けているアルツハイマー病および関連認知症(ADRD)患者に対するベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)および抗精神病薬の使用は、患者の死を早めている可能性のあることが新たな研究で示された。ホスピス入所後にベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬の使用を開始したADRD患者では、使用していなかった患者と比べて180日以内に死亡するリスクがそれぞれ41%と16%高いことが示されたという。米ミシガン大学の老年精神科医であるLauren Gerlach氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月14日掲載された。

日本人男性、認知機能と関連する肥満指標は?

 地域在住の日本人中高年男性において、さまざまな肥満指標と認知機能との関連を調査した結果、腹部の内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)が低いと認知機能が低いことが示された。滋賀医科大学の松野 悟之氏らがPLoS One誌2025年10月23日号で報告した。  これまでの研究では、内臓脂肪組織が大きい人は認知症リスクが高く、内臓脂肪組織が認知機能低下と関連していたという報告がある一方、内臓脂肪組織と認知機能の関係はなかったという報告もあり一貫していない。この横断研究では、滋賀県草津市在住の40~79歳の日本人男性を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis)に参加した853人のうち、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)に回答し、CTで腹部の内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定した776人のデータを解析した。参加者をVSRの四分位群に分類し、共分散分析を用いて各四分位群のCASI合計スコアおよび各ドメインスコアの粗平均値および調整平均値を潜在的交絡因子を調整して算出した。