神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:7

血液検査で多様な疾患の発症を予測可能か

 たった一滴の血液により何十もの疾患の発症を予測できるかもしれない。新たな研究で、血液中のタンパク質の「シグネチャー」を分析することで、血液がん、神経変性疾患、肺疾患、心不全を含む67種類の疾患を予測できる可能性が示された。英ロンドン大学クイーン・メアリー校、プレシジョンヘルスケア大学研究所のJulia Carrasco-Zanini氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に7月22日掲載された。  この研究は、UKバイオバンク製薬プロテオミクスプロジェクト(UK Biobank Pharma Proteomics Project;UKB-PPP)からランダムに選び出した4万1,931人の2,923種類に及ぶ血漿タンパク質のデータを用いたもの。Carrasco-Zanini氏らは、これらの血漿タンパク質のデータを対象者の電子カルテと関連付け、10年間での218種類の疾患の発症を予測する予測モデルを作成した。その上で、基本的な臨床情報のみを用いたモデル、あるいは基本的な臨床情報に37種類の臨床アッセイデータを組み合わせたモデルとこのモデルの疾患予測能を比較した。

コーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

 大規模な国際症例対照研究であるINTERSTROKE研究で、コーヒー、紅茶、緑茶などの摂取量と脳卒中の関連を検討したところ、コーヒーを多量摂取(1日5杯以上)する人は脳卒中全体と脳梗塞のリスクが高く、逆に緑茶を摂取する人ではこれらのリスクが低かったという。カナダ・McMaster University and Hamilton Health SciencesのAndrew Smyth氏らがInternational Journal of Cancer誌オンライン版2024年6月18日号で報告した。

お腹や腕の脂肪は神経変性疾患リスクと関連

 お腹や腕の周りの脂肪が増えたという人は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の発症リスクが高い可能性のあることが、四川大学(中国)のHuan Song氏らによる研究で示唆された。一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べて神経変性疾患のリスクが低い可能性のあることも示された。この研究結果は、「Neurology」に7月24日掲載された。  Song氏らは今回、UKバイオバンクの参加者41万2,691人(登録時の平均年齢56.0歳、女性55.1%)の健康上および身体上の特徴を平均で9.1年追跡したデータを分析した。参加者は研究登録時に、ウエストやヒップのほか、握力や骨密度、脂肪量、除脂肪体重などの測定を受けていた。

糖質摂取と認知症リスク〜前向きコホート研究

 いくつかの研究において、食事中の糖質摂取と認知症との潜在的な関連が示唆されているが、実証するエビデンスは限られている。中国・四川大学のSirui Zhang氏らは、この関連性について、大規模集団による検証を行った。BMC Medicine誌2024年7月18日号の報告。  英国バイオバンクコホートに参加した21万832人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。食事中の糖質摂取を反映するため、糖質の絶対摂取量および相対摂取量、高糖質食スコアを用いた。糖質の絶対摂取量は、英国バイオバンクのOxford WebQにより特定した。糖質の相対摂取量は、絶対摂取量を総食事エネルギー量で割ることにより算出した。高糖質食パターンの特定には、縮小ランク回帰法を用いた。食事中の糖質摂取量とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病との縦断的関係を調査するため、Cox比例ハザード回帰分析および制限付き3次スプラインを用いた。根本的なメカニズムを解明するため、探索的媒介分析を行った。

日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。  2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。

1年間のAChEI治療、認知機能が低下しやすい患者は?

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)治療を1年間行ったアルツハイマー病患者の治療アウトカムについて、台湾・Kaohsiung Veterans General HospitalのPao-Yuan Ching氏らが、調査を実施した。Aging Medicine誌2024年6月18日号の報告。  2015年1月〜2021年9月の電子カルテデータを、台湾南部の医療センターより入手した。対象は、新たにアルツハイマー病と診断され、AChEIによる治療を行った60歳以上の患者。認知機能評価は、AChEI治療前および治療1年後のフォローアップ調査時に実施した。認知機能低下は、AChEI治療1年後のミニメンタルステート検査(MMSE)が3超低下または臨床的認知症尺度(CDR)1以上低下と定義した。ベースライン時とフォローアップ調査後の認知機能の関係は、潜在的な交絡因子で調整したのち、ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

アルツハイマー病の進行予測に役立つアプリを開発

 人により大きく異なるアルツハイマー病の進行を予測できるアプリの開発に関する研究成果を、オランダの研究グループが報告した。このモデルにより、軽度認知障害(MCI)患者と軽度認知症患者の認知機能がどのようなペースで低下するのかを予測できる可能性が示されたという。アムステルダム自由大学アルツハイマーセンター(オランダ)のWiesje van der Flier氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に7月10日掲載された。  Van der Flier氏らは、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が検査で確認されているMCI患者310人と軽度認知症患者651人の計961人(平均年齢65±7歳、女性49%)のデータを用いて、認知症検査の一種として知られるミニメンタルステート検査(MMSE)の経時的な変化を予測するモデルを構築した。MMSEスコア(0〜30点)は、25点以上を正常、21〜24点を軽度認知症、10〜20点を中等度の認知症、10点未満を重度認知症と見なす。予測の際には、年齢、性別、ベースラインのMMSEスコア、アポリポタンパク質E4の有無、MRI検査で測定した全脳および海馬の体積、脳脊髄液中のバイオマーカー(Aβ1〜42およびリン酸化タウの濃度)のデータが考慮された。

スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と関連

 日本人高齢者を対象とした大規模研究により、スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と有意に関連することが明らかとなった。LIFE Study(研究代表者:九州大学大学院医学研究院の福田治久氏)のデータを用いて、大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室の北村哲久氏、戈三玉氏らが行った研究の結果であり、「Brain Communications」に6月4日掲載された。  パーキンソン病は年齢とともに罹患率が上昇し、遺伝的要因や環境要因などとの関連が指摘されている。また、脂質異常症治療薬であるスタチンとパーキンソン病との関連を示唆する研究もいくつか報告されているものの、それらの結果は一貫していない。血液脳関門を通過しやすい脂溶性スタチンと、水溶性スタチンの違いについても、十分には調査されていない。

アルツハイマー病、血液検査で高い精度で診断/JAMA

 血漿中リン酸化タウ217(p-tau217)と非p-tau217の比率(%p-tau217)と血漿中アミロイドβ42およびアミロイドβ40の比率(Aβ42:Aβ40比)を組み合わせたAPS2(amyloid probability score 2)と、%p-tau217のみに基づく検査は、事前に定義されたカットオフ値を用いた場合、1次医療および2次医療で認知症状を有する人のアルツハイマー病(AD)を高い精度で診断できることが明らかになった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、事前に定義されたバイオマーカーのカットオフ値を前向きに評価する目的で実施したコホート研究の結果を報告した。血液検査によりADを診断できる可能性がある。JAMA誌オンライン版2024年7月28日号掲載の報告。

中年期~高齢期の血漿バイオマーカー、認知症発症との関連を解析/JAMA

 米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のYifei Lu氏らは、中年期から高齢期にかけての血漿バイオマーカーの変化とすべての認知症との関連を、米国で行われた前向きコホート試験「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)試験」の参加者データを用いて後ろ向き解析にて調べた。アルツハイマー病(AD)の神経病理、神経損傷、アストログリオーシスを示す血漿バイオマーカー値は加齢とともに上昇し、既知の認知症リスク因子と関連していた。また、AD特異的バイオマーカーと認知症の関連は中年期に始まり、高齢期のAD、神経損傷、アストログリオーシスの血漿バイオマーカー測定値は、すべてが認知症と関連していた。血漿バイオマーカーは、AD病理と神経変性に関する費用対効果の高い非侵襲的なスクリーニングになると大きな期待が寄せられているが、発症前に関しては十分に解明されておらず、多様な集団や生涯にわたる追加の調査が必要とされていた。JAMA誌オンライン版2024年7月28日号掲載の報告。