医療現場で見逃される遺伝性血管性浮腫(HAE)とは

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2010/01/29

 



2010年1月27日、CSLベーリング株式会社本社(勝どき)にて、「血漿分画製剤と共に生きる」と題して開催されたメディアセミナーについてお届けする。

順天堂大学医学部腎臓内科 客員准教授の大井洋之氏は、遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angio Edema:HAE)が疾患としてほとんど認知されていない現状と、今後、医療従事者や製薬会社のみでHAEの認知理解を進めていくには限界があることを示唆した。

大井氏によれば、「HAEが、補体の制御因子であるC1 INH欠損によって発症することはすでに明らかになっており、またHAEの診断は比較的容易で、C1 INH製剤による補充療法も可能な疾患である」ため、現在のHAE治療における最大の問題点は、「その認知理解の低さ」にあるという。

その背景として、HAEがこれまで一部の医師や補体研究者のみの認知にとどまっていたことや、原因不明の浮腫として扱われていたこと、そして呼吸器・消化器にも浮腫が出現し、激しい症状をきたすことなどがほとんど知られていなかったためであるとした。

なお、欧米では5万人~15万人に1人の頻度で発症するとされており、日本での有病率はいまだ不明だという。大井氏は、現在進めているHAEの啓蒙活動によって、「2~3年後には有病率が明らかになることを期待したい」と述べた。

続いて、HAEがC1 INHの遺伝子異常で発症する常染色体性遺伝の遺伝性疾患であり、その症状は主にブラジキニンによるものであることを紹介した。

HAE発症後、症状は、皮下、粘膜下、消化器、喉頭などに起こり、喉頭浮腫が適切に治療されない場合の致死率はおよそ)30%に上るという。発作は、精神的ストレスや外傷、抜歯、薬物投与などで誘発されることがあり、薬物投与では特にACE阻害薬に注意が必要だと述べた。
 
そのほか、補体研究会における取り組みや、疾患認知度に関するアンケート結果などから、医療現場でもいまだにHAEが認知されていない現状についても紹介した。

大井氏は最後に、「過剰に不安をあおることなくHAEの認知理解が進むように、医療従事者・研究者・メディアなどが協力していかなければならない」と強く訴え、本講演を終えた。

(ケアネット 片岡磨衣子)