雪下ろしによる転落外傷、記録的な大雪に見舞われた2010年冬からの教訓

提供元:ケアネット

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公開日:2013/01/07

 

 2010年冬にフィンランドでは記録的な大雪に見舞われ、とくに南部地方で雪下ろしのために屋根に上った人の転落外傷が例年にない規模で発生したという。ヘルシンキ大学病院のM. Aulanko氏らは、その発生状況と大学病院で行われた処置およびコストなどについて解析した。Scandinavian Journal of Surgery誌2012年第4号12月15日号の掲載報告。

 本研究は、ヘルシンキ大学病院外傷診療部門で治療を受けた、突発的な転落により外傷を負った患者の外傷パターン、院内治療、外科手術、および主要な入院総コストを調べることを目的とした。

 同部門で2010年1月1日~3月31日の間に治療を受けた、雪下ろしで転落し外傷を負った患者をすべ登録した。年齢、性別、可能な限り飲酒の影響、安全ベルトの有無、転落した高さ、職業などが記録された。また、外傷発生の時間帯、場所、入院遅延、外傷状態、手術、ICU入室期間および入院期間もレトロスペクティブに調べた。

 コストについては、6月末までのアフターケアも含めた分について検証した(仕事への影響、リハビリテーション治療などのコストは除外した)。

 主な結果は以下のとおり。

・屋根から転落したのは30例(65%)であり、12例ははしごからの転落であった。
・屋根から転落したが、安全ベルトで地面への激突を免れた人は3例であった。
・アルコールの影響が認められた人は2例であった。
・調査期間の3ヵ月間に入院した患者は、46例であった。そのうち41例(89%)は2月に起きた事故であった。
・大半は男性(43例、93%)であり、平均年齢は52.9歳(範囲:22~82歳)であった。
・ICUに入院となったのは7例であった。平均入室期間は7日であった。
・平均入院期間は4.7日であった。30日死亡率は0%であった。
・46例の外傷総数は97件であり、そのうち骨折は65件(63%)であった。最も頻度の高い外傷は、上下肢と脊柱の骨折であった。
・調査対象となった大学病院での治療コストは、総計約54万ユーロであり、患者1人当たり約1万2,300ユーロであった。
・結果を踏まえて著者は、「同様の不必要な転落を防止するためには、外傷リスクを理解するとともに除雪の必要性についてプロフェッショナルの意見を求めることが重要である。必要であれば、適切な安全ベルトを着用すること、専門業者の助けを借りることが望ましい」とまとめている。

(ケアネット)