良好な医師-患者間コミュニケーションは糖尿病治療における患者理解度と※1自己効力感を高めることが、帝京大学の井上真智子氏らの断面調査研究によって示された。また筆者は、患者のもつ伝達的・批判的※2ヘルスリテラシーも同様に、糖尿病治療における患者理解度と自己効力感に相関することを示した。BMC family practice誌オンライン版2013年3月23日号掲載の報告。
※1自己効力感:自己管理行動に対する自信や可能性に対する認知
<※2各ヘルスリテラシーの定義>
・機能的ヘルスリテラシー:日常生活で効果的に機能するための読み書きの基本的スキル
・伝達的ヘルスリテラシー:さまざまな形のコミュニケーションツールから健康情報やその意図を引き出し、その情報を状況変化に応じて適応させるスキル
・批判的ヘルスリテラシー:情報を批判的に分析し、ライフイベントやその時々の場面をよりコントロールするためにその情報を使うスキル
対象は、日本国内の17のプライマリ・ケアを行うクリニックで診療経験のある2型糖尿病患者326例。対象者にはヘルスリテラシー(機能的・伝達的・批判的)に関するアンケートに答えてもらい、その結果から糖尿病治療に対する患者理解度と自己効力感を評価した。また、医師-患者間コミュニケーションを評価するために医師の説明が明確かどうかについても調査した。
主な結果は以下の通り。
・269例を解析した結果、伝達的・批判的ヘルスリテラシーは糖尿病治療に対する患者理解度(β=0.558、0.451、p<0.001)および自己効力感(β=0.365、0.369、p<0.001)と正の相関がみられた。
・医師の説明の明確さは、糖尿病治療に対する患者理解度(β=0.272、p<0.001)と自己効力感(β=0.255、p<0.001)に相関していた。
・多変量解析の結果、ヘルスリテラシーと医師の説明の明確さは、糖尿病治療に対する患者理解度と自己効力感にそれぞれ独立して相関していた。
(ケアネット 岸田有希子)