フランス・Centre de Pharmacologie CliniqueのGisele Pickering氏らは、帯状疱疹後神経痛を有する高齢患者について、痛みが及ぼすいくつかの認知領域への影響について検討した。その結果、疼痛といくつかの認知障害との関連、および疼痛治療に関して全身性治療は認知障害と関連していること、一方で局所治療は認知機能を障害することなく疼痛治療に有益であることを明らかにした。これまで帯状疱疹後神経痛が認知症障害を伴うことは示されていたが、認知機能への特異的な影響については明らかにされていなかった。Pain Practice誌オンライン版2013年5月23日号の掲載報告。
研究グループは、帯状疱疹後神経痛患者42例と健常ボランティア42例の合計84例を対象に断面研究を行った。
患者群42例のうち、21例は全身性治療(抗うつ薬、抗痙攣薬、鎮静薬)を受け、21例はリドカイン5%軟膏の局所治療を受けていた。
参加者は全員、4つの認知機能に関するテスト[反応時間、意味記憶、意思決定、視覚的記憶(Cantab法)]を受けた。
主な結果は以下のとおり。
・被験者は、男性40例、女性44例で、平均年齢は72±8歳であった。
・帯状疱疹後神経痛(PHN)を有した患者は、年齢、性によって健常ボランティアと適合した。
・全身性PHN治療を受けた患者、とくに抗うつ薬治療を受けた患者において、警戒心、意思決定、意味記憶について、有意な障害が認められた(p<0.05)。
・一方で、リドカイン5%軟膏を受けた患者およびその適合健常ボランティア対照群では、有意な変化はみられなかった。
・今回の研究で、全身性PHN治療が、いくつかの認知領域に悪影響を及ぼすことが示された。
・疼痛および抗うつ薬と関連している認知障害は、局所疼痛治療によって改善する可能性があった。
・著者は「リドカイン5%軟膏の局所治療は、これら脆弱な高齢者において疼痛軽減と認知機能の維持に有益な選択肢である」と結論した。
(ケアネット)