8月29日~31日に仙台市にて開かれた 第11回日本臨床腫瘍学会において、「Cancer Survivorshipを考える―Social Networkを活用した就労支援―」とと題したワークショップが開催された(座長:一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン 天野 慎介氏、国立がん研究センターがん対策情報センター 高橋 都 氏)。がん治療およびがん患者の就労に対するついて社会の理解不足により、がんを罹患してから離職を余儀なくされる患者は多く、がん患者にとっては深刻な問題となっている。そして、その問題に対する一つの取り組みが始まろうとしている。
アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)の調査によれば、がん患者の二人に一人は、がん罹患後に勤務先を変更している。とくに非正規雇用の場合、がん罹患後に離職するがん患者は約6割と高い。また、それらの患者の半数は年収300 万円以下であり、治療費を捻出するため、身内からの借金や預貯金を切り崩しているケースも少なくない。パネリストの一人、NPO法人HOPEプロジェクトの桜井なおみ氏は、業務が計算できない等の理由で業務戦力から除外される等、勤務先の無理解を示す事例が多いという。また、がん患者の相談は罹患時間が経っても減らずることはなく、初期の治療や副作用の悩みから、時間の経過とともに生活や仕事の相談が増えていくそうだ。
そのような中、厚生労働省の「がん患者等長期療養者に対する就労支援モデル事業 」が今年とからスタートする。これは全国5ヵ所(国立がん研究センター中央病院、横浜市立市民病院、静岡県立静岡がんセンター、兵庫県立がんセンター、国立病院機構四国がんセンター)のがん診療連携拠点病院と最寄りのハローワークが連携して、離職を余儀なくされたがん患者等に対して就職支援する取り組みである。ハローワークには就職支援ナビゲーターを配置し、労働条件に応じた求人の開拓、事業者側への雇用条件の緩和指導、就職後の職場定着の指導を行う。また、ハローワーク職員が、定期的にがん診療連携拠点病院の相談支援センターに出張相談に出向く。病院側は相談支援センター相談員が長期療養者と就職相談を実施、ハローワークへの就職志望者の誘導などを実施する。
座長の天野氏は、「たとえ、がんが治っても経済的に追いつめられ、なかには治ったことを後悔する患者もいる」と訴える。また、同じく座長の高橋氏は自身も医師であることから、「医療者は就職斡旋のプロになる必要はないが、機会を待たずに、患者の仕事について早い段階から積極的に聞き、問題があれば、上記のような相談窓口を紹介するなどしてほしい。そして、離職を考えている患者さんには早まらないよう指導してほしい」と述べた。
関連情報
働くがん患者と家族に向けた包括的就業システムの構築に関する研究
がんと仕事のQ&Aほかマニュアル
NPO法人HOPEプロジェクト
就労セカンドオピニオン~電話で相談・ほっとコール~
(ケアネット 細田雅之)