スイス・バーゼル大学病院のJulia Spoendlin氏らは、住民ベースコホート研究の結果、片頭痛を有する女性において、わずかだが酒さ発症のリスクの増大が観察されたことを報告した。とくに50歳以上の重度の片頭痛を有する女性でリスク増大が認められたという。酒さは一般によくみられる皮膚疾患であり、神経性炎症や神経血管性調節障害を伴う。片頭痛は、血管性変化と無菌性炎症を伴う。両疾患の関連は数十年にわたり示唆されているが、エビデンスは不足している。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年9月号(オンライン版2013年5月1日号)の掲載報告。
研究グループは本検討において、片頭痛と片頭痛薬のトリプタン(商品名:イミグランほか)、ならびに酒さの発症リスクとの関連について調べた。トリプタンは、血管収縮性および抗炎症作用を有するが、このクラスの薬剤による酒さへの潜在的影響については調べられていなかった。
そこで研究グループは、片頭痛またはトリプタン曝露と酒さ発症リスクとの関連について分析するため、英国のGeneral Practice Research Databaseを基に症例対照研究を行った。同データベースから1995~2009年の酒さ患者を特定し(症例群)、1症例につき1人の非酒さ対照被検者を適合し、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて、症例群と対照群の、初回酒さ診断前の片頭痛有病率とトリプタン曝露について比較した。
主な結果は以下のとおり。
・症例群5万3,927例、対照群5万3,927例のうち女性の被験者において、全体的にわずかだが酒さと片頭痛の関連が認められた(補正後オッズ比:1.22、95%信頼区間[CI]:1.16~1.29)。男性では両者の関連はみられなかった。
・同関連は、50~59歳の女性の片頭痛患者において、やや関連性が明確であった(同:1.36、1.21~1.53)。
・また、トリプタン服用女性においても、年齢が高くなるほどわずかだがリスクの増大が認められた。オッズ比は、60歳以上の女性が最も高く、1.66(95%CI:1.30~2.10)であった。
・本検討は、後向きの症例対照研究であり、特定のバイアスおよび交絡の程度を除外できない点で限界があった。
・以上から著者は、「女性の片頭痛患者において、酒さを呈するリスクがわずかだが増大することが認められた。とくに50歳以上の重度の片頭痛女性患者にみられた」と報告した。
(ケアネット)