超高齢(85歳以上)の大腸がん患者における手術の短期および中期の成績は明確ではない。北里大学外科の中村 隆俊氏らは、超高齢者における腹腔鏡手術の実行可能性を評価するために、腹腔鏡手術と開腹手術における術後の短期および中期の成績を比較した。その結果、超高齢の大腸がん患者に対する手術の安全性と治療有用性が認められ、良好な短期および中期成績を得られた。また、腹腔鏡手術は開腹手術よりも術中出血量が少なく、術後在院期間が短かったことから、侵襲性が低く、超高齢の大腸がん患者に適していることが示唆された。Surgical laparoscopy, endoscopy & percutaneous techniques誌2014年2月号に掲載。
超高齢者の大腸がん手術は腹腔鏡手術が開腹手術と比較して術後在院期間が短かった
対象は、1987~2010年に同科で治療を受けた85歳以上の大腸がん患者80例[男性38例(48%)、女性42例(52%)]で、平均年齢87.3±2.3歳、追跡期間中央値45ヵ月(4~252ヵ月)であった。85~89歳が69例(86%)、90歳以上が11例(14%)であった。米国麻酔学会(ASA)のリスク分類は、Iが2例(2%)、IIが44(55%)、IIIが34(43%)であり、IIとIIIで98%を占めた。開腹手術は46例(58%)、腹腔鏡手術は34例(42%)であった。
超高齢者における大腸がん手術を評価した主な結果は以下のとおり。
・術後合併症は、21例(26%)に発生し、イレウスが8例(10%)、創感染が7例(9%)、吻合部漏出が3例(4%)であった。
・腹腔鏡手術は、開腹手術と比較し、術中出血量が有意に少なく(p<0.0001)、術後在院期間が有意に短かった(p=0.0001)が、手術時間が有意に長かった(p=0.0017)。
・臨床病理学的には、腹腔鏡手術では、腫瘍サイズが有意に小さく(p=0.0371)、リンパ節郭清が有意に少なく(p=0.0181)、またステージII/IIIが有意に少なかった(p=0.0090)。
・術後合併症は、開腹手術群で14例(30%)、腹腔鏡手術群で6例(18%)に発生したが、有意差はなかった。
・超高齢者における大腸がん手術の中期成績について、無病生存率および全生存率は、ステージIでは90.9%および100%、ステージIIでは89.7%および100%、ステージIIIでは68.4%および75.9%であった。
(ケアネット 金沢 浩子)