日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の肺がん治療薬ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)が、2014年4月17日薬価収載された。適応症は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん。同社は、同日「ジオトリフ発売記者説明会」を開催。和歌山県立医科大学 山本 信之氏、国立がん研究センター中央病院 山崎 直也氏、神奈川県立循環器呼吸器病センター 加藤 晃史氏が、同薬剤の有効性および有害事象について紹介した。
山本氏は、ジオトリフの薬剤特性および臨床試験の結果について紹介。同薬剤は、EGFRのみならずHER2、HER3、HER4といったすべてのErbBファミリーの受容体を持続的かつ選択的に阻害することで、従来阻害できなかったヘテロ二量体によるシグナル伝達も複合的に阻害する。また、共有結合により不可逆的に結合することで、シグナル伝達をより効果的に阻害できる可能性がある。国際共同第III相臨床試験であるLUX-Lung3試験では、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおいて、化学療法(CDDP+PEM)と比較し有意に無増悪生存期間(PFS)を延長している。とくに日本人のサブグループのPFS中央値は13.8ヵ月と良好である。山本氏は、近年著しい改善を示すPFSをさらに延長させる可能性があると述べた。
次に、山崎氏は、同薬剤の有害事象である皮膚障害について紹介。従来のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKI)共通の有害事象として皮膚障害があり、ジオトリフも同様に皮膚障害が発生する。なかでも、同薬剤に特徴的なのは、他のEGFR-TKIと比較して爪囲炎など爪の異常の発生頻度が高い印象があることだと述べた。山崎氏はまた、皮膚障害の発生頻度と治療効果が相関することに触れ、皮膚障害の悪化により治療を断念することのないよう、予防と適切な治療により重症化を防ぐことが肝要であると述べた。
最後に、加藤氏は、同薬剤の有害事象である下痢・間質性肺疾患のマネジメントについて紹介。同薬剤による下痢は、グレード3以上の重症例も少なくない。しかしながら、下痢が原因の投与中止例はなく、早期に適切な対応を行うことで、コントロール可能であると述べた。一方、間質性肺疾患は、同薬剤の投与中止理由の最も多い有害事象である。とはいえ、日本人における発生頻度は3%程度と、他のEGFR-TKIと比較し高いとはいえないようである。加藤氏はまた、間質性肺疾患についても、症状チェック、リスク因子の鑑別などで早期発見、早期治療が重要であると述べた。
ジオトリフの薬価は以下のとおり。
ジオトリフ錠20mg1錠:5,840.70円、30mg1錠:8,547.40円、40mg1錠:11,198.50円 、50mg1錠:12,760.00円
(ケアネット 細田 雅之)