トラスツズマブ抵抗性の乳がんにおいては、細胞内PI3K/Akt/mTOR経路のシグナル活性化の関与が示唆されている。本研究は、パリ第11大学腫瘍内科のFabrice Andre氏らにより、mTOR阻害薬エベロリムス(商品名:アフィニトール)の追加投与によるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)感受性回復を評価することを目的に行われた。Lancet Oncology誌オンライン版 2014年4月14日号の報告。
本試験は、プラセボ対照無作為化二重盲検第III相試験として、タキサン治療歴のあるHER2陽性、トラスツズマブ抵抗性、進行乳がん患者を対象に行われた。
対象患者は、weeklyトラスツズマブ(2mg/kg)+ビノレルビン(商品名:ナベルビン)(25mg/m2)にdailyエベロリムス(5mg/日)を追加した群(以下エベロリムス群)、またはプラセボを追加した群(以下プラセボ群)に無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)でintention to treatで評価された。
無増悪生存期間については最終的な分析報告を基にした(全生存率追跡調査は進行中)。
主な結果は以下のとおり。
・2009年10月26日から2012年5月23日に569例が登録され、エベロリムス群(n=284)とプラセボ群(n=285)に無作為に割り付けられた。
・PFS中央値はエベロリムス群、プラセボ群でそれぞれ7.00ヵ月(95%CI:6.74~8.18)、5.78ヵ月(95%CI:5.49~6.90)であり、ハザード比は0.78(95%CI:0.65~0.95、p=0.0067)であった。
・主なグレード3/4の有害事象として、好中球減少症[エベロリムス群204例(73%)対 プラセボ群175例(62%)]、白血球減少症[106例(38%)対 82例(29%)]、発熱性好中球減少症[44例(16%)対 10例(4%)]、疲労感[34例(12%)対 11例(4%)]などであった。
・重篤な有害事象の報告は、エベロリムス群117例(42%)、プラセボ群55例(20%)であった。
エベロリムスの追加投与は、タキサン治療歴のあるHER2陽性、トラスツズマブ抵抗性、進行乳がん患者のPFSを有意に延長した。しかしながら、臨床的な利益は、本集団の有害事象プロファイルに照らして考慮すべきであろう。
(ケアネット 細田雅之)