2014年11月19日、ファイザー株式会社は「慢性骨髄性白血病に残るアンメットニーズへの新たな治療選択肢」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。
慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞で染色体転座によって融合したBCR-ABL遺伝子によって引き起こされる。年間の発生率は10万人に1人程度で、慢性期には自覚症状はほとんどなく、移行期、急性転化期に進行すると予後不良となる。
今回のセミナーでは、同社のボスチニブ(商品名: ボシュリフ)が、9月26日に製造販売承認を取得したことを踏まえ、CML治療の概要やボスチニブの臨床成績などが紹介された。
耐性化の問題を越えて
セミナーでは、赤司 浩一氏(九州大学大学院医学研究院病態修復内科 教授)が、「CML治療の変遷と展望」と題し、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブによる治療とその問題点を紹介した。
TKIの登場で患者の生存期間が劇的に伸び、服薬を継続する限り進行を抑制できる反面、継続していくうちに薬剤抵抗性(耐性)が出現すること、薬剤ごとに異なる副作用の問題(不耐容)があることを説明し、今後こうした問題をクリアする治療薬ができることに期待を寄せた。
点突然変異への感受性と副作用プロファイルが既存のTKIと異なる
次に松村 到氏(近畿大学医学部血液・膠原病内科 主任教授)が、「CMLの新規治療薬ボシュリフへの期待」と題し、ボスチニブの特性や臨床成績、副作用などを解説した。
CMLの治療目標は、病期進行の回避にあり、血液検査で「異常なし」の結果を目指すことにある。
第1世代TKIのイマチニブに対する抵抗性のメカニズムとして、
BCR-ABL遺伝子の点突然変異とSrcファミリーキナーゼの活性化がある。第2世代TKIであるニロチニブ、ダサチニブは、イマチニブに抵抗性を示す点突然変異の多くに有効であるが、これらに抵抗性を示す点突然変異もある。また、副作用として、ニロチニブではQT延長や高血糖、ダサチニブでは胸水や血液毒性などがあり、医療現場ではより副作用の少ないものが求められていた。こうした背景のもと、ボスチニブが登場した。
ボスチニブは第2世代TKIであり、他のTKIには抵抗性を示すが本剤には感受性を示す点突然変異があることが報告されている。また、イマチニブ投与により活性化したSrcファミリーキナーゼにも阻害作用を示す。一方、オフターゲットのチロシンキナーゼは阻害しない。
国内の第I/II相臨床試験では、前治療薬に抵抗性または不耐容の慢性期CMLに対する2次治療(慢性期CML、移行期/急性転化期CML)、3次治療における有効性が検討され、2次治療慢性期CML群(n=28)における96週の無増悪生存率は94.4%、全生存率は96.4%であった。
副作用としては、下痢、発疹、ALT増加、悪心、嘔吐などが多く、イマチニブ、ダサチニブとは副作用プロファイルが異なる。下痢については、服薬後、数日で発生するが、早期の把握とコントロールが可能で、休薬後下痢症状が治まったら服薬を再開できるとのことである。
松村氏は、今後、イマチニブ治療後の2次治療だけでなく、ニロチニブ、ダサチニブ抵抗性例に対する2次治療、3次治療でのボスチニブの効果に期待している、とレクチャーを終えた。
ボスチニブは、前治療薬に抵抗性または不耐容のCMLに対して、1日1回500mg(最大600mgまで増量可)食後経口投与で用いられる。
(ケアネット 稲川 進)