命を脅かす感染症に対して日本社会は守られているのか!?

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/26

 

 2015年2月17日、都内にて、感染症対策に関するセミナー(主催:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が行われた。

院内感染リスクの高さと対策の難しさ
 はじめに、賀来 満夫氏(東北大学大学院 内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野 教授)が、米国におけるエボラ出血熱の二次感染を例に、医療環境における感染症リスクの高さについて述べた。
 一方で、感染症対策には「誰でも感染する可能性がある」「原因菌が目に見えない」「感染後すぐに症状が発現しない」「必ずしも診断が容易ではない」といった特有の難しさがある。それ故、知らない間に感染拡大が起こる可能性があり、注意が必要である。
 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の病院感染制御の目標でも、患者の安全確保に加えて、医療従事者の安全確保が挙げられている。しかし、わが国の医療従事者において、自身に対する感染制御の意識は必ずしも高いとは言えない。医療従事者の感染は患者にもリスクとなることを念頭に置き、患者と医療従事者の双方が協力し合い、感染予防に取り組んでいくことが重要である。

米国における針刺し予防対策の歴史
 次に、ジェニーン・ジェーガー氏(バージニア大学 医療システム学部 内科学 教授)が、米国の針刺し予防対策について説明した。米国でも以前は針刺し事故が多かったが、2000年の針刺し安全予防法の制定以降、安全機構付きの器材が普及し、針刺し事故は減少傾向にあるという。ただし、器材購入のみではその効果は限定的であり、器材を扱うプロセスも含めたトータルマネジメントが重要であると強調した。

日本における針刺し事故の現状
 わが国においても年間45~60万件の針刺し事故が起こっている。1999~2009年のC型肝炎の新規感染原因の割合をみると、約3分の1が院内感染で発症しているという報告もある。また、インスリン、抗がん剤、インターフェロンといった在宅医療での自己注射の普及に伴い、家庭・オフィス・公共施設など医療機関以外の針刺し事故が増加傾向にある。
 患者を含めた一般の人々の感染症に対する危機意識はまだ低く、社会全体で危機管理を行っていく必要があるだろう。

(ケアネット 有田衣里)