オピオイドは慢性腰痛の治療にしばしば用いられるが、副作用のため長期投与の有益性は限られている。タペンタドールは、オピオイド受容体作動作用およびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するオピオイド鎮痛薬で、他の強オピオイドと比較して有害事象の頻度が少なく重症度も低い可能性があることから、ポルトガル・リスボン大学のJoao Santos氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、タペンタドール徐放性製剤は、プラセボおよびオキシコドンと比較して鎮痛効果があり、オキシコドンより安全性プロファイルおよび忍容性は良好であることが明らかとなった。ただし、著者は「鎮痛効果の差は大きくなく、治療中止率が高いことや、研究の結果に不均一性がみられることなどから、この結果の臨床的な意義は定かではない」とまとめている。Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2015年5月27日号の掲載報告。
タペンタドールとプラセボまたはオキシコドンを比較
研究グループは、中等度から重度の疼痛に対するタペンタドール徐放性製剤の有効性、安全性および忍容性を評価することを目的として、慢性筋骨格系疼痛患者を対象にタペンタドールとプラセボまたは実薬(オキシコドン)を比較した無作為化試験について、2014年3月まで発表された論文を言語は問わず、電子データベース(CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、Web of Science)を用いて検索した。また、製薬企業と連絡を取り追加情報を得た。
2人の研究者が独立して試験を選択し、バイアスリスクを評価するとともにデータを抽出して、タペンタドール徐放性製剤 vs.プラセボ、およびタペンタドール徐放性製剤 vs.オキシコドンを比較する2つのメタ解析を行った。有効性の主要評価項目は疼痛強度(11ポイントの数値的評価スケール)の変化量によって評価される鎮痛効果および有効率(疼痛強度が50%以上軽減した患者の割合)、安全性の主要評価項目は副作用による中止率であった。
タペンタドールの無作為化試験の主な結果は以下のとおり。
・変形性関節症または腰痛患者を対象とした並行群間比較試験4件(計4,094例)が本レビューに組み込まれた。12週間の第III相試験3件と52週間の非盲検安全性評価試験1件で、対照薬は4件すべてがオキシコドン、そのうち3件ではプラセボも含まれた。対象患者は変形性膝関節症患者2件、腰痛患者1件、両方1件であった。
・オキシコドン対照試験2件、プラセボ対照試験1件は有効率に関するデータがなかった。
・2件の試験は、バイアスリスクが高いと判定された。
・プラセボ群との比較の場合、タペンタドール群では12週時の疼痛強度が平均0.56ポイント(95%信頼区間[CI]:0.92~0.20)低下し、有効率は1.36倍増加(12週間における効果に関する治療必要人数:number needed to treat for an additional beneficial outcome[NNTB]=16、95%CI:9~57)したが、有効性の評価結果に関して中等度~高度の不均一性が認められた。
・また、タペンタドール群で副作用による治療中止のリスクが2.7倍増加した(12週間における有害事象に関する治療必要人数:number needed to treat for an additional harmful outcome[NNTH]=10、95%CI:7~12)。
・オキシコドン群との比較の場合、タペンタドール群では疼痛強度のベースラインからの低下量が0.24ポイント(95%CI:0.43~0.05)であり、有効率を評価した2件の研究では統計学的有意差はなかったものの有効率が1.46倍増加した(95%CI:0.92~2.32)。
・また、タペンタドール群では、有害事象による治療中止のリスクが50%(95%CI:42%~60%)、有害事象の全リスクが9%(95%CI:4~15)、いずれも減少し、重篤な有害事象のリスクも有意差はないものの43%(95%CI:33~76)減少した。
・しかしながら、主要評価項目を除く大部分の有効性に関する評価結果、および安全性に関する評価結果に、中等度から高度の不均一性が認められた。
・サブグループ解析において、変形性膝関節症患者を対象とした研究、ならびに質が高く短期間の研究の統合解析で、タペンタドールは高い改善効果を示した。しかし、サブグループ間の効果量に統計学的な有意差は認められなかった。
(ケアネット)