ヘマトクリット(Ht)値と循環器疾患(CVD)リスクの関連については、一貫した結果が得られていない。九州大学(現 九州医療センター)の後藤 聖司氏らは、一般的な日本人集団(久山町研究)において、Ht値と脳卒中および冠動脈疾患(CHD)発症との関連性を調査した。その結果、Ht値の増加および減少はどちらもCVDのリスク増加と関連していたが、Ht値の影響はCVDのサブタイプにより異なることが示唆された。Atherosclerosis誌オンライン版2015年7月10日号に掲載。
著者らは、1988年に40歳以上であった地域在住の日本人2,585人を19年間追跡調査した。これらの被験者を、ベースライン時のHt値の男女別の四分位数に応じて4群に分類した。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中、301例(虚血性:210例、出血性:91例)が脳卒中を発症し、187例がCHDを発症した。
・虚血性脳卒中のリスクは、Ht値の最低四分位(Q1:男性44.7%以下、女性39.3%以下)および最高四分位(Q4:男性49.7%以上、女性43.8%以上)の両方で、基準とした第3四分位(Q3:男性47.1~49.6%、女性41.7~43.7%)より高かった。なお、多変量補正ハザード比(95%信頼区間)は、Q1が1.55(0.99~2.43)、Q2が1.44(0.93~2.23)、Q3が1.00、Q4が1.62(1.06~2.50)であった(傾向のp=0.86)。
・Ht値と出血性脳卒中のリスクは線形の逆相関を示した(Q1:1.91[1.03~3.54]、Q2:1.26[0.68~2.34]、Q3:1.00、Q4:0.81[0.41~1.61]、傾向のp=0.009)。
・CHDのリスクはQ4で大幅に増加した(Q1:1.13[0.71~1.80]、Q2:1.08[0.69~1.71]、Q3:1.00、Q4:1.60[1.04~2.46]、傾向のp=0.13)。
(ケアネット 金沢 浩子)