2015年10月17日、第40回肺音(呼吸音)研究会および第5回肺聴診セミナーが東京のJA共済ビルで開催される。フィジカル・アセスメントの重要性が再認識されている今、若手医師をはじめとした医療従事者に人気のこのイベントについて、同研究会当番幹事およびセミナー講習会長を努める福島県立医科大学 呼吸器内科 教授 棟方充氏に聞いた。
肺音(呼吸音)研究会について教えていただけますか?
1816年に聴診器が発明されて200年。肺聴診は今もなお活用されるフィジカル・アセスメントの基本です。肺音研究の歴史は古いのですが、1970年代後半のコンピューター・サイエンスの進歩で大きく進化しました。国際呼吸音学会はその頃、1976年に開催されました。それに続き、本邦でも1983年に肺音(呼吸音)研究会が設立されました。当初は年2回の開催でしたが、その後年1回となり、今年で第40回を迎えます。
われわれ肺音(呼吸音)研究会は、今日の臨床医学に工学、流体力学の要素を加え、呼吸音の分類、用語統一、音解析、技術開発、臨床応用などの検討を行っています。第40回の今年も多くの演題を募集し、討論する予定です。
肺聴取セミナーについて教えいただけますか?
呼吸音の研究が進化する一方、看護師や理学療法士など医師以外の医療従事者にも聴診の機会が増えてきました。それに応え、アカデミックな研究会とは別に実践的な肺音聴診の教育の場として、肺聴診セミナーを設立し研究会と同日に開催しています。今年で第5回を迎えます。セミナーの参加者は研修医や指導医に加え、医師以外の医療従事者で、毎回盛況です。今回は広い会場にして、より多くの参加を募っています。
肺聴診セミナーは、肺音の基礎から臨床応用まで、音や画像も豊富に使った、一日で学べるプログラム構成になっています。例年「肺聴診のサイエンス」というセッションで肺音の成り立ちを解説します。これをベースに実際の呼吸音を聴き、こういう音を聞いたら何を考えるか、身体所見としてどう活用するのかを学びます。肺聴診については、体系的に教えている教育機関も少なく、指導できる人材も限られるというのが現状です。そのよう中、このセミナーは非常に有益なものだといえるでしょう。
一方、画像検査の発達の中、肺をはじめとした聴診が軽視されてきているという声も聞きますが、いかがお考えですか?
十分な教育がなされていないこともあり、呼吸音を含め音に非常に豊富な情報が含まれていることが十分理解されていない。それが最も大きな問題だと思います。肺聴診は画像検査よりも鋭敏な場合が多々あります。実際、石綿肺の検出では、肺聴診の方が胸部X線検査よりも感度が高いですし、喘息やCOPDも画像所見での早期発見は困難ですが、肺音では明らかなサインがみられます。さらに、CT等の画像検査の放射線被爆についても問題視されており、聴診の重要性が再認識されています。
音には様々な情報が含まれています。聴診という一つの技術に留まることなく、音の情報を臨床全体に活かすことで、これからの医学の可能性がより広がっていくと思います。
(ケアネット 細田 雅之)