プライマリケア医に糖尿病診療マニュアルは有用か

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/18

 

  国立国際医療研究センター病院では、一般診療所・クリニック向けに診療の最適化と病診連携の観点から「糖尿病標準診療マニュアル」を作成・配布し、糖尿病診療の均てん化などを図っている。

 本診療マニュアルは、インターネットで一般無料公開されており、内容は半年ごとに改訂され、検査の頻度や選択薬剤の優先度を明記するとともに、エビデンスの系統的な批評・査定による推奨を記載し、専門医・拠点病院への紹介の適応とタイミングも述べられている。

 今回、本診療マニュアルの有用性がランダム化試験で研究され、その結果、糖尿病合併症に関して、診療の質を改善することが能登 洋氏(聖路加国際病院内分泌代謝科)によって示唆された。また、血糖コントロール・合併症罹患率・病診連携などに関する長期試験での更なる検証も重要としている。Journal of Diabetes Investigation誌に掲載(Accepted manuscript online:2015年12月12日)。

 エビデンスに基づいた多数の診療ガイドラインや診療マニュアルの有効性が、わが国では検証されていないことに鑑み、本研究では、「糖尿病標準診療マニュアル」が、地域のかかりつけ医に通院する2型糖尿病患者の診療の質(Quality Indicator:QI)を改善するかどうかを検証した。

 本研究は、かかりつけ医を対象に、「糖尿病治療ガイド」に加えて「糖尿病標準診療マニュアル」を配布する群(介入群)と前者のみを配布する群(対照群)の2群に割り付け、QIを比較するクラスター・ランダム化比較試験とした。参加かかりつけ医には評価項目をマスクし、主要評価QIとして診療達成目標遵守割合(糖尿病網膜症評価[1回/年]遵守率・尿中微量アルブミン測定[1回/6ヵ月]遵守率・血中クレアチニン[1回/6ヵ月]遵守率)を指標とした。また、副次評価QIとしてHbA1c測定[1回/3ヵ月]遵守率・血圧測定[1回/3ヵ月]遵守率・総コレステロール(またはLDLコレステロール)測定[1回/3ヵ月]遵守率の診療達成目標遵守割合とHbA1c値を指標とした。

 主な結果は以下のとおり。

・8地区42人の一般医が参加し、計416人の糖尿病患者が登録された。
・介入群(n=234)・対照群(n=182)のベースライン平均HbA1c値はそれぞれ7.1%、 7.0%(p=0.76)であり、各QIにも有意差はなかった。
・介入後1年間で、尿中微量アルブミン測定の実施率は、「糖尿病標準診療マニュアル」により有意に向上した(17.9% vs.5.3%、p=0.016)が、他のQIには両群間で有意な変化はなかった。
・介入後の平均HbA1c値にも両群間で有意差はなかった(7.1% vs.7.1%、p=0.90)。

 詳しい論文内容については、こちら
『糖尿病標準診療マニュアル』の入手は、こちら

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(ケアネット 稲川 進)