2016年2月、NPO法人医桜が「闘魂外来」記者会見を開催した。会見では、「闘魂外来」会長兼医長の徳田 安春氏(総合診療医学教育研究所 CEO)と同事務局であるNPO法人医桜代表の溝口 博重氏が講演、同活動の現在の状況を説明した。
近年の医学部人気から医学生の数は増えている。そうした中、日本の医学生は診療現場に出る機会が少なく、初期研修でいきなり臨床現場に入ることに危機感を持っているが、現時点では有効な施策が打てていない状況がある。これに対し、厚生労働省、文部科学省とも、臨床能力の確実な習得のため診療参加型臨床実習の充実を図り、医学教育を改善することを要望している。しかしながら、診療現場での臨床実習の実施は施設によって幅があり、忙しい現場にあっては必ずしも丁寧に行われていないのが現状である。
こうした問題を抱える中、外部研修として徳田安春氏らが主催する「闘魂外来」が話題を呼んでいる。「闘魂外来」は、依頼された病院施設を借りて実際の患者の外来を行う実践型臨床実習である。「どんな患者が来ても断らない。自分との闘い」という意味から名付けられた。
研修に参加する医学生は幾つかのチームに分かれ、先輩の研修医や上級の指導医監修の下、実際の患者で問診、身体診察、鑑別診断、アセスメント、治療プラン、患者への説明という一連の流れを行う。午前中に外来を行い、午後からは徳田氏とゲスト講師のレクチャーで症例カンファレンスを行う。この研修、もともとは徳田 安春氏が勤務先の筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 水戸協同病院で行っていたもの。2013年から各地に拡大し、現在までに12都道府県14施設での実施実績がある。
研修に参加した医学生からは「患者と話し問診することで学習が深まった」「診療経験を持つことで自信がついた」という声が聞かれ、評価は良好。僻地での開催にも学生はやって来る。また、研修開催に当たっては、主催施設の全面的な協力が必要となるが、主催施設にもたらされるメリットもある。たとえば、実施後の研修医の募集が良好であったり、院内スタッフの教育に対する意識向上がみられたりするという。
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(ケアネット 細田 雅之)