経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用と網膜剥離のリスクが注目され、その関連が議論されている。フランスNational Agency for Medicines and Health Products Safety(ANSM)のFanny Raguideau氏らは、医療データベースを用いた疫学研究により、経口フルオロキノロン服用開始後10日以内に網膜剥離を発症するリスクが有意に高いことを明らかにした。著者は、「経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離発症リスクとの関連について、さらに検討しなければならない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年3月10日号の掲載報告。
研究グループは、経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離(裂孔原性および滲出性)発症との関連を評価する目的で、フランスの医療データベースを用い、2010年7月1日~13年12月31日にかけて、網膜剥離の成人患者を対象に症例クロスオーバー研究を行った。網膜剥離発症の6ヵ月以内に網膜剥離や網膜裂孔、眼内炎、硝子体内注射、脈絡膜網膜硝子体内生検およびヒト免疫不全ウイルス感染症の既往歴または入院歴のある患者は除外された。
主要評価項目は、リスク期間中(網膜剥離の手術直前1~10日)の経口フルオロキノロンの服用で、対照期間(61~180日前)と比較した。また、中間リスク期間(最近[11~30日前]および過去[31~60日前])における服用との関連や、経口フルオロキノロンや網膜剥離の種類別についても検討した。
主な結果は以下のとおり。
・選択基準を満たした網膜剥離患者2万7,540例(男性57%、年齢[平均±SD]61.5 ±13.6歳)中、663例が経口フルオロキノロンを服用していた。リスク期間中の服用が80例、対照期間(61~180日前)中が583例であった。
・経口フルオロキノロン処方後10日間に、網膜剥離発症リスクの有意な増大が認められた(調整オッズ比:1.46、95%信頼区間[CI]:1.15~1.87)。
・裂孔原性(調整オッズ比:1.41、95%CI:1.04~1.92)および滲出性(同:2.57、95%CI:1.46~4.53)いずれの網膜剥離も、有意なリスクの増大が認められた。
・経口フルオロキノロンの最近服用(調整オッズ比:0.94、95%CI:0.78~1.14)および過去服用(同:1.06、0.91~1.24)は、網膜剥離発症のリスクと関連していなかった。
(ケアネット)