肺がん医療は「協働」の時代

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/27

 

 2016年4月15日、都内で日本肺癌学会主催の第11回肺がん医療向上委員会が開催され、特別講演「医療者・社会と共に、患者が変える肺がん医療」が行われた。
 本委員会は、岐阜市民病院がんセンターの診療局長で、肺がん医療向上委員会副委員長の澤 祥幸氏による、「肺がん領域においては、患者自身の努力だけでなく周囲の支援が必要」との言葉により開始された。今回の講演者は2人で、両人ともステージ4の肺がんを患っている。

日本の患者にも「患者力」を
 初めに、山岡 鉄也氏による講演が行われた。山岡氏は肺がんの罹患経験を生かしたペイシャント・アドボカシー(患者支援)活動を行っている。国際肺癌学会(IASLC)日本初の患者委員として選ばれた山岡氏は、昨年、世界肺癌学会議(WCLC)に参加した際に感じた海外の「患者力」の高さに驚いたという。同会議は肺がん患者ならばすべてのプログラムに参加可能となっており、まさに患者中心の考え方が実践されていたのだ。その経験を踏まえて山岡氏は、「日本国内においてもまずは患者自身が病気を理解し、主体的に治療計画に参加することが重要」と、患者力を高める必要性を強調した。

肺がん医療における「協働」の可能性
 続いて、長谷川 一男氏による講演が行われた。長谷川氏は、テレビディレクターという職業を生かして自身の闘病生活を描いたドキュメンタリー番組を作成するなど、メディアを通して肺がん患者の現実を伝えている。罹患発覚7年目となる現在も精力的に活動を行っており、昨年には肺がん患者の会「ワンステップ!」を立ち上げた。講演の中で長谷川氏は、「患者自身が、支えてくれようとしているものの存在に気付くこと」が重要と述べ、これからの肺がん医療が目指すべき、医療関係者・製薬業界・マスメディア・企業・行政の「協働」の可能性について言及した。

 肺がん領域の患者団体が直面する困難としてはその維持の難しさがあり、いかにしてアドボカシーを持続可能なものにしていくかが今後の課題だという。その解決の糸口となるのは、長谷川氏の言葉のとおり、患者だけでなく医療者・社会全体が「協働」して行う患者支援にあるのではないだろうか。

(ケアネット 細川 千鶴)