米国では、2006年に滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対し抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法が導入された。米国・デューク大学のArseniy P. Yashkin氏らは、メディケア受給者を対象に後ろ向きコホート研究を行い、心血管イベントの発生について5年間の追跡調査を行った。その結果、滲出型AMD患者に対する抗VEGF療法は、急性心筋梗塞(AMI)、脳卒中または全死亡のリスクを増加しないことが示されたという。Ophthalmology誌オンライン版2016年8月11日号掲載の報告。
研究グループは、滲出型AMD患者におけるAMIおよび脳卒中による死亡率および入院率に対する抗VEGF療法の影響について検討する目的で、メディケアのデータベースからランダムに5%を選択し、2000年および2006年に新規に診断された滲出型AMDおよび非滲出型AMD患者を抽出した。
2006年に初めて滲出型AMDと診断されたメディケア受給者を治療群とし、抗VEGF薬をまだ使用できなかった2000年に滲出型AMDと診断された受給者、および2000年または2006年に非滲出型AMDと診断された受給者を対照群とした。治療群は、抗VEGF療法を実際に受けたかどうかは問わなかった。
解析にはCox比例ハザードモデルを用い、5年間の追跡調査期間中におけるAMIまたは脳卒中による死亡および入院について評価した。
主な結果は以下のとおり。
・抗VEGF療法が広く用いられ始めた2006年に、初めて滲出型AMDと診断された受給者では、2000年に滲出型AMDと診断された受給者と比較して、5年の追跡期間内でAMIによる死亡率および入院率に関して統計学的に有意な変化はないことが確認された。
・主たる解析では非滲出型AMD群から追跡期間中に抗VEGF療法を受けた受給者を除外したため、この群の個人(2006年に非滲出型AMDと新しく診断された受給者の11%)を再び含めて感度解析を行ったところ、結果は類似していた。
(ケアネット)