日本整形外科学会は10月8日の「骨と関節の日」を前に、都内にて「ロコモ度テストでロコモを測ろう!」をテーマに、プレスセミナーを開催した。
セミナーでは、同学会の進めるロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下「ロコモ」と略す)普及への今後の取り組みや若年からのロコモ対策の重要性などが説明された。
2022年には国民の8割が認知するロコモへ向けて
はじめに同学会理事長である丸毛 啓史氏(東京慈恵会医科大学 整形外科 教授)が、2007年に提唱し、長年取り組んできたロコモの啓発・普及活動について説明した。
ロコモとは、「運動器の障害により移動機能の低下を来した状態」と定義する。介護原因の4分の1を運動器疾患が占めていることから、健康寿命延長の目的と相まって、「健康日本21」でも取り上げられている。
具体的目標としては、国民への「ロコモ」の認知度を2022年までに80%まで引き上げる(2012年17.3%)とともに、足腰に痛みのある高齢者を同年までに1,000人当たり男性で200人(2010年218人)、女性で260人(同291人)に減少させることを目的としている。
ロコモの認知度は2012年には17.3%、2015年には44.4%、2016年には47.3%と徐々に増加しているが、まだまだ若年者には浸透していないのが問題だという。
骨量上限は20歳までで決まる
続いて石橋 英明氏(伊奈病院 整形外科部長)が、「ロコモ度テストでロコモを測ろう! 生涯を通じた運動器の健康と“早めの察知”の重要性」と題し、ロコモ度テスト普及の展望と若年からのロコモ認識の重要性を説明した。
現在、要支援・要介護認定者がわが国では621万人と報告されている。また、2025年には、70歳代後半が人口のピーク世代となる中で、いかに高齢者が自立しつつ健康寿命を延長するかが喫緊の課題となっている。
運動器からみた自立の基本とは「立って、歩いて、また座る」ができることであり、たとえば「立ち上がりテスト」でいえば、40cmの高さのイスや台に座っている状態から片脚で立ち上がることができれば、十分な下肢筋力があるとされる。こうした運動器の変化に早く気付くために提唱されたのが「ロコモ」であり、客観的に調べるために開発されたのが「ロコモ度テスト」である。
ロコモ度テストは、次の3つで構成される。
・立ち上がりテスト:40cmのイスや台から片脚で立ち上がることができるかどうか
・2ステップテスト:2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値(1.3未満でロコモの始まり)
・ロコモ25:身体活動状態に対する25の質問
これらの結果により、ロコモ度1(ロコモが始まった状態)、ロコモ度2(ロコモが進行した状態)を設定し、運動習慣と栄養改善の指導、運動器疾患の有無の評価、必要により診療を行っていくものである。
ロコモについて知っておきたいこととして、骨量と筋量の減少がある。骨量は20歳まで著明に増加し、女性は閉経前後から、男性は60歳から低下する。同じく40代以降で毎年筋量は0.5~1.0%ずつ低下する。とくに骨量は、20歳以降は増加することがなく、骨量の上限は成長期の運動習慣が重要になってくるという
1)。
成長期・若年期から骨量・筋量への配慮が大切だが、現代のように運動習慣の欠如やダイエットなど栄養摂取のアンバランス化が、将来の骨量・筋量へ影響してくることは、あまり知られていない。
たとえば、若年女性への筋量調査では、半数がサルコペニアに該当したという報告もあり
2)、将来のロコモリスクを避けるためにも、さらに年代を下げてロコモへの啓発活動が重要になる。
「ロコモアドバイス大賞」でアイデア募集
啓発活動として一例をあげると、働く20~30代の女性向けに「まるのうち保健室」を期間限定で設置し、健康相談や骨量測定、ロコモ度テストなどを実施。広く知識の普及に努めているほか、日本整形外科学会では、「ロコモアドバイス大賞」を創設し、ロコモの予防・改善のための運動、栄養、生活習慣に関するアイデアや声かけといった「ロコモ予防のためのアドバイス」を一般から広く募集するという(関係するテーマで150文字以内。締切は11月30日まで。大賞などには賞金)。
最後に石橋氏は、「ロコモ度テストを通じて、全年代への運動器の健康意識を強化することで、ロコモの認知と理解から対策の実行・定着へと進展させ、2022年にはロコモの認知度80%達成へとつなげていきたい」とその思いを語り、レクチャーを終えた。
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(ケアネット)