複視は、緑内障治療の合併症として知られている。治療後の発生率や原因について前向きに調査した報告はこれまでなかったが、米国・メイヨークリニック医科大学のPhilip Y Sun氏らは複視調査票を用いた研究を行い、外科治療後および薬物治療中の緑内障患者の複視は過小認識されている可能性があることを明らかにした。線維柱帯切除術後より緑内障ドレナージインプラント(GDD)手術後のほうが複視の頻度が高く、非共同性拘束性上斜視が典型的であった。著者は、「複視質問票を用いた患者の症状の確認と標準化は有用」と述べたうえで、「患者に対してGDD手術と関連する複視の発生頻度は高いことを説明しておくことが重要」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。
研究グループは、2014年8月~2015年4月の間に、外科治療後(術後1ヵ月以内)または薬物治療中の緑内障成人患者195例を前向きに登録し、定期的な経過観察時に複視質問票(Diplopia Questionnaire)を用いて複視を評価した。患者の内訳は、GDD(バルベルト350、バルベルト250[Abbott Medical Optics 社]、またはアーメドFP7[New World Medical社])手術47例、線維柱帯切除術61例、薬物療法87例であった。
複視質問票において、正面視または本を読む位置で「時々(sometimes)」「しばしば(often)」、または「常に(always)」複視を認める場合を「複視」と定義した。複視のタイプと原因については、斜視専門家ならびに緑内障専門家が共同でカルテを調査し評価した。
主な結果は以下のとおり。
・複視は、195例中41例(21%)に認められた。
・外科治療後の両眼複視は、GDD47例中11例(23%、95%信頼区間[CI]:12~38)、線維柱帯切除術61例中2例(3%、95%CI:0.4~11)に認め、GDDで高頻度であった(p=0.002)。
・外科治療による両眼複視と関連している斜視で最も頻度が高かったのは、上斜視(GDD症例10/11例、線維柱帯切除術症例2/2)であった。
・単眼複視の頻度は、GDD、線維柱帯切除術および薬物治療で同程度であった(それぞれ2/47[4%]、4/61[7%]、4/87[5%])。
・外科治療に起因しない両眼複視の頻度は、GDD、線維柱帯切除術および薬物治療で同程度であった(3/47[6%]、5/61[8%]と10/87[11%])。
(ケアネット)