EGFR-TKIはEGFR活性変異陽性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の1次治療薬である。しかし、初期の効果にもかかわらず、1~2年で耐性が発現し病勢進行にいたる。その耐性の60%を占める新たな変異は790Mをも標的とする第3世代EGFR-TKIオシメルチニブが本邦でも登場した。この新たなTKIの適正な使用には再生検などによるT790Mの特定が必要である。本邦の再生検では、経気管支組織による採取が一般的だが、腫瘍病巣へ到達の困難さや、侵襲性などにより、その成功率は制限される。
この研究は、本邦における進行・転移NSCLCにおける再生検の状況および成功率の調査を目的として、九州がんセンター 野崎要氏らにより行われた、本邦28施設による多施設後ろ向き観察試験である。
再生検の結果
・患者の年齢中央値は63歳、395例の再生検例が評価された。
・再生検の成功率は79.5%であった。
・経皮的生検の成功率は88.5%、経気管支生検の成功率は73.9%であった。
・転移巣での成功率は85.1%で、他の部位より優れていた。
・採取部位は原発巣55.7%、転移巣30.6%、所属リンパ節12.7%であった。
・採取方法は経気管支組織生検が最も多く、62%を占めた。
・再生検に関連した合併症は5.8%でみられ、もっとも多かった事象は気胸であった。
初回生検と再生検の差異
・採取部位は初回生検と再生検の間で差がみられ、転移巣が初回生検の9.1%から再生検で30.6%へ、区域リンパ節が7.1%から前出の12.7%へと比率が高まった。
・採取方法についても初回生検と再生検で差がみられ、外科的切除が初回生検の1.8%から再生検で7.8%へ、経皮的組織生検が7.6%から29.1%に増加した。
再生検でのT790Mの発現状況
・再生検でのT790M変異は約半数に確認された。
・T790Mの誘導を初期EGFR変異で層別化すると、Del19変異患者の55.6%、L858R変異患者の43.0%で起こった。
・T790Mの誘導を初期治療のEGFR-TKI別で層別化すると、ゲフィチニブ単独例では52.8%、エルロチニブ単独では48.0%、と両剤で有意な差はみられなかった。一方、例数が少ないもののアファチニブ単独では20.0%であった。
オシメルチニブの登場で、再生検に注目が集まっている。今回の試験から得られた知見は、第3世代EGFR-TKIの臨床使用に際し、重要な情報となるであろう。
(ケアネット 細田 雅之)