重症下肢虚血に対する足首以下への血行再建の効果は? 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2017/01/20 重症下肢虚血(CLI)は予後は悪く、保存的療法後1年の大切断は73~95%という報告がある。CLIの救肢において、バイパス手術および血管内治療(EVT)による動脈血行再建は重要である。バイパス手術は、救肢率、創傷治癒率共に高いものの、その侵襲性から適応となる患者は多くない。そのような中、侵襲性の低さとバイパス手術に匹敵する救肢率からEVTが注目され始めている。一方、CLIでは足首以下の病変の合併が多く、この足首以下の病変の存在は、創傷治癒率を低下させ、創傷治癒遅延(DH)をもたらすことが明らかになっている。EVTによる足首以下の病変への補助的な血行再建(PAA)は、創傷治癒を改善させる可能性があり、有効性を示す単施設の研究も報告されている。しかしながら、EVTの創傷治癒率は高いとはいえない。そこで、多施設によるPAAの効果を評価するため、RENDEZVOUS(Retrospective Analysis for the Clinical Impact of Pedal Artery Revascularization Strategy for Patients With Critical Limb Ischemia) レジストリ研究が宮崎市郡医師会病院 仲間達也氏らにより行われ、JACC Cardiovascular Interventions誌で報告された。 RENDEZVOUSレジストリでは、国内の経験豊富な循環器センター5施設でEVTを施行した、膝下動脈と足首以下に病変を有する新規CLI患者257例(257肢)が、PAA施行群140例と非施行群117例の2群に分類され、後ろ向きに評価された。主要評価項目は、1年後の創傷治癒率と創傷治癒までの時間。副次的有効性評価項目は、救肢率、大切断回避生存率、再血行再建回避率。副次的安全性評価項目は、PAA成功率、手技関連合併症であった。また、創傷治癒遅延の独立危険因子を多変量解析で求め、危険因子の数から創傷治癒遅延スコア(DHスコア)を規定。DHスコア(危険因子数)0を低リスク、DHスコア1~2を中等度リスク、DHスコア3を高リスクに層別化し、各リスク群でのPAAによる1年後の創傷治癒率を評価した。PAA追加の基本的な適応は、1)標的血管血行再建後の血流が確認されない、2)足動脈のランオフ不良によるimpaired flow現象、3)広範囲な創傷、救肢と創傷治癒のために大量の血液供給が必要になる感染、とした。 主な結果は以下のとおり。 ・患者の平均年齢は73.2歳、男性が68.1%、51.4%が自立歩行不能、62.3%が透析患者、77.8%の患肢がRutherford分類5であった。 ・全体の救肢率は88.5%、大切断回避生存率は73.5%、創傷治癒率は49.5%であった。 ・主要評価項目である創傷治癒率は、PAA群57.5%、非PAA群37.3%とPAA群で有意に高かった(p=0.003)。 ・同じく主要評価項目の創傷治癒までの時間は、PAA群211日、非PAA群365日とPAA群で有意に短かった(p=0.008)。 ・副次的安全性評価項目であるPAA手技の成功率は88.6%、手技関連合併症は17例(6.6%)。PAA群と非PAA群で差はみられなかった。 ・副次的有効性評価項目はいずれも両群間で差はみられなかった。 ・DHの危険因子は、歩行不能、創傷の深さ(UTグレード2以下)、透析であった。 ・低リスク群の創傷治癒率は、PAA群93.3%、非PAA群69.2%とPAA群で高かったが、統計学的有意には至らなかった(p=0.184)。 ・中等度リスク群の創傷治癒率は、PAA群59.3%、非PAA群33.9%とPAA群で有意に高かった(p=0.001)。 ・高リスク群の創傷治癒率は、PAA群29.4%、非PAA群35.7%と、PAAによる創傷治癒への影響はみられなかった(p=0.477)。 PAAによる介入は、救肢率や大切断回避生存率、再血行再建回避率には影響を及ぼさなかったものの、創傷治癒に関連するアウトカムには重要な影響を及ぼした。また、PAAの介入は、創傷治癒遅延中等度リスク群でとくに有効であった。当研究は後ろ向き非無作為化研究であったが、今後はさらに前向きの無作為化研究の実施が望まれる。 (ケアネット 細田 雅之) 原著および論説はこちらNakama T, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2017;10:79-90. Mustapha JA,et al. JACC Cardiovasc Interv. 2017;10:91-93. 関連コンテンツ【CVフロントライン】CLIの創傷治癒を改善した足首以下の血行再建「RENDEZVOUSレジストリ」 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会 医療一般 日本発エビデンス(2022/04/07) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09) 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08) 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06) Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)