予防接種後、まれに眼炎症が観察されることがあるが、ほとんどは永続的な視覚障害を生じることなく回復する。今回、近畿大学医学部眼科学教室の國吉一樹氏らは、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンならびに麻疹風疹混合(MR)ワクチン接種後に、両眼の急性失明を来した生後13ヵ月の日本人の健康な男児について報告した。後ろ向きの調査の結果、感染により滲出性網膜剥離とともに重篤な脈絡網膜炎が誘発されてリカバリンに対する自己抗体が産生され、自己抗体が急速に光受容体の機能を変化させたものと推察された。著者らは、「初期の感染はMRワクチン接種に起因した可能性がある」との見解を示したうえで、「われわれの知る限り過去に報告例はないので、ワクチン接種後の失明は偶然の一致によるものかもしれないし、ワクチン接種に関連しているのかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年3月30日号掲載の報告。
MRワクチン接種24日後に両眼の急性失明
研究グループは、急性失明を来した生後13ヵ月の日本人の健康な男児のカルテを後ろ向きに調査し、眼底およびフルオレセイン血管造影所見、超音波検査および光干渉断層計(OCT)所見、網膜電図検査所見について検討した。
ワクチン接種後に両眼の急性失明を来した男児のデータを検討した主な結果は以下のとおり。
・男児が両眼の急性失明を来したのは、Hibワクチンと肺炎球菌結合型ワクチン接種31日後であり、MRワクチン接種24日後であった。
・男児は、失明する10日前に風邪を呈していた。
・視力低下発症1日後、超音波検査で滲出性網膜剥離が認められたが、4日後、眼底は正常であった。
・男児の眼は物体を追わず、瞳孔対光反射はみられなかった。
・前部ぶどう膜炎の徴候はなかった。
・副腎皮質ステロイドで治療が行われたが、視力は改善しなかった。
・網膜血管は次第に減少し、深部網膜にびまん性の小さな白い斑点状病変が現れた。
・OCTで、外顆粒層の菲薄化とエリプソイドゾーンの消失が認められた。
・網膜電図は記録できなかった。
・これらの所見から、とくに外節の光受容体の重篤な機能障害が示唆された。
・血清のウェスタンブロット法の結果、光受容体のカルシウム結合タンパク質であるリカバリンの抗体が検出された。
(ケアネット)