米国・カリフォルニア大学のElizabeth L. Whitlock氏らによる約1万人の高齢者の縦断的なコホート研究により、持続性の痛みが記憶力低下の加速と認知症リスクの増加に関連することがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年6月5日号に掲載。
本研究は、米国の代表的なHealth and Retirement Study(HRS)における地域在住の高齢者1万65人へのインタビューによるコホート研究である。参加者は、2000年に62歳以上であり、1998年および2000年に痛みと認知機能に関する質問に回答した。データ分析は2016年6月24日~10月31日に実施。1998年と2000年のインタビューの両方で、中等度または重度の痛みがしばしばあると回答した参加者を「持続性の痛み」を有するとした。主要アウトカムは、2000~12年の神経心理学的テストの結果と情報提供者および代理人のインタビューから推定された記憶スコアと認知症確率であった。
主な結果は以下のとおり。
・適格であった1万65人のうち、60%が女性であり、ベースライン時の年齢の中央値は73歳(四分位範囲:67~78歳)であった。
・ベースラインにおいて、参加者の10.9%に持続性の痛みが影響し、抑うつ症状が重く、日常生活活動(動作)の制限が大きかった。
・共変量の調整後、持続性の痛みがある参加者は、痛みのない参加者と比較して、9.2%(95%CI:2.8~15.0%)のより急速な記憶力低下がみられた。この記憶力低下の加速は、10年後に薬剤管理ができなくなる相対リスクが15.9%高くなり、自分自身で財務管理ができなくなる相対リスクが11.8%高くなることを意味する。
・調整後の認知症確率は、持続性の痛みがある参加者では7.7%(95%CI:0.55~14.2%)速く増加し、これは10年後の認知症確率の絶対的増加が2.2%になることを意味する。
(ケアネット 金沢 浩子)