昨今の電子技術の進展で、中心視野感度を携帯機器を用いて家庭でモニターすることが可能となっている。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew J. Anderson氏らは、家庭モニタリングが緑内障による急速視野損失の早期検出に有用かどうかを調べるため、コンピュータシミュレーションによる検討を行った。その結果、利用コンプライアンスが完全ではなくとも、家庭モニタリングの活用により、急速な視野損失の進行を検出可能なことを明らかにした。著者は、「残された課題は、そのようなアプローチの費用対効果を実証することである」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年7月29日号掲載の報告。
研究グループは、家庭モニタリングによる高頻度の検査が緑内障の急速視野損失を早い段階で検出可能かどうかを調べると同時に、コンプライアンスが順守されない場合、または検査結果のばらつきが大きかった場合に、その有益性にどんな影響があるかを調べるために、コホート試験で確認した選択パラメータを用いてコンピュータシミュレーションを実施した。
慢性緑内障患者および急性緑内障患者について、クリニックでは年1回または6ヵ月に1回の2つのスケジュールを、家庭モニタリングでは月1回、隔週、週1回の3つのスケジュールを、それぞれ5年間にわたって実行する視野症例シリーズ(10万例)をシミュレーションした。シミュレーションでは、コンプライアンスの低下やモニター手法のばらつきを考慮する操作や、視野測定に関する既知の変動特性の勘案のほか、43例の患者コホートでは2ヵ月時点での結果の変動をみることで家庭モニタリング装置の妥当性の検証も行った。また、緑内障の進行を判断する基準は、最小二乗回帰法で求めたシミュレート患者の平均偏差(MD)データの有意な勾配とした。
主要評価項目は、急速視野損失(-2デシベル[dB]/年損失MD)の識別感度であった。
主な結果は以下のとおり。
・コホート試験の被験者は、高眼圧症または緑内障疑いで緑内障治療を受けた患者43例(開放隅角および閉塞隅角)であった(平均年齢71歳、範囲:37~89歳)。
・急速視野損失の識別感度は、クリニックの6ヵ月に1回検査スケジュールを2.5年達成後で0.8であった。
・一方、家庭モニタリングでは、週1回の検査スケジュールで、かつ検査コンプライアンスが63%と中程度にもかかわらず、0.9年で同感度に到達した。
・クリニックでの6ヵ月に1回検査に対する週1回の家庭モニタリングのパフォーマンスは、たとえ家庭モニタリングによる試験結果にばらつきがあった場合、あるいは、患者のコンプライアンスが低い場合にも維持された。
(ケアネット)