虫垂炎に虫垂切除ではなく抗菌薬で治療された患者では、診断の難しさと長年の炎症によって腸がん罹患率が増加する恐れがある。今回、スウェーデン・ウプサラ大学のMalin Enblad氏らの研究で、虫垂炎の非外科的治療を受けた患者では短期および長期における腸がん罹患率が増加したことが報告された。著者らは、「虫垂炎患者の最適な管理に関する議論ではこの結果を考慮すべき」としている。European Journal of Surgical Oncology誌オンライン版2017年9月7日号に掲載。
著者らは、スウェーデン全国入院患者登録1987~2013から、虫垂炎と診断されたが虫垂切除の外科的手順コードのない患者を検索した。次にこのコホートをスウェーデンがん登録とマッチさせ、虫垂がん・大腸がん・小腸がんの標準化罹患比(SIR)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・虫垂炎の非外科的治療を受けた1万3,595例のうち352例(2.6%)が、虫垂がんまたは大腸がんまたは小腸がんと診断された(SIR:4.1、95%CI:3.7~4.6)。
・虫垂がん(SIR:35、95%CI:26~46)および右側大腸がん(SIR:7.5、95%CI:6.6~8.6)で罹患率の増加が最大であった。
・虫垂炎後12ヵ月未満の患者を除外した場合、SIRは依然として増加を示し、虫垂炎後5年間の右側大腸がんのSIRは3.5(95%CI:2.1~5.4)であった。
・膿瘍を合併した虫垂炎後のSIRは4.6(95%CI:4.0~5.2)、合併していない虫垂炎後のSIRは3.5(95%CI:2.9~4.1)であった。
(ケアネット 金沢 浩子)