糖尿病のリスクが放射線によるがんリスクより増加~福島原発事故

提供元:ケアネット

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公開日:2017/10/12

 

 2011年の福島原発事故は、住民の生活習慣病や放射線被ばくなどの複数のリスクの増加と恐怖を引き起こした。福島県立医科大学の村上 道夫氏らが、原発事故関連の放射線によるがんリスクと糖尿病リスクの増加について損失余命(LLE)を用いて評価したところ、糖尿病関連のLLEが放射線被ばくによるがん関連のLLEを大きく上回った。PLOS ONE誌2017年9月28日号に掲載。

 本研究では、南相馬市と相馬市(それぞれ、福島第一原子力発電所の北10~40kmと35~50km)の住民を調査。放射線被ばくと糖尿病のリスクを比較する指標として、LLE (loss of life expectancy)を使用した。また、食品流通の制限、除染、全身カウンター検査と介入など、放射線関連対策の費用対効果も評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・最初の10年間における糖尿病の追加発症率を考慮したシナリオでの糖尿病関連LLEは、全住民で4.1(95%信頼区間:1.4~6.8)×10-2年、40~70代の住民で8.0(同:2.7~13.2)×10-2年であった。

・生涯にわたる放射線被ばくによるがん関連LLEは、全住民で0.69(2.5~97.5パーセンタイル:0.61~0.79)×10-2年、40代~70代の住民で0.24(同:0.20~0.29)×10-2年であった。

・上記のシナリオにおける糖尿病関連LLEは、平均的な放射線被ばくによるがん関連LLEと比べて、全住民で5.9倍、40代~70代の住民で33倍であった。

・放射線対策(食品流通の制限、除染、全身カウンター検査と介入)の1年余命延長費用(cost per life-year saved:CPLYS)は、一般的な健康診断と従来の糖尿病管理のCPLYSより1桁超~4桁超、高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)