老人ホームに入所している認知症やうつ病患者における疼痛治療が、睡眠にどのような影響を及ぼすかを、ノルウェー・ベルゲン大学のKjersti Marie Blytt氏らが検討を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2017年12月28日号の報告。
多施設2アーム二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床研究を2014年8月~2016年9月に実施した。対象は、ノルウェーの老人ホーム47施設に長期入所している、MMSE(ミニメンタルステート検査)、CSDD(コーネル認知症抑うつ尺度)により認知症およびうつ病と診断された患者106例。鎮痛剤を使用していなかった患者に対しては、経口アセトアミノフェン(3g/日)またはプラセボ経口投与のいずれかにランダム化し、段階的に疼痛治療を行った。すでに疼痛治療を実施していた患者に対しては、ブプレノルフィン貼付剤(最大量:10μg/時間を7日間)またはプラセボ貼付剤のいずれかにランダム化を行った。睡眠状態は、アクチグラフにより、1週間のベースライン測定および1週間の継続治療を含む14日間を連続して評価した。睡眠パラメーターは、総睡眠時間、睡眠効率、入眠潜時、中途覚醒、早朝覚醒、覚醒回数とした。
主な結果は以下のとおり。
・両介入群(アセトアミノフェン群、ブプレノルフィン群)と対照群との比較では、睡眠効率(70~72% vs. 70~67%、p<0.01)、入眠潜時(32~24分 vs. 47~60分、p<0.05)、早朝覚醒(50~40分 vs. 31~35分、p<0.05)のパラメーターに、統計学的に有意な改善が認められた。
著者らは「疼痛治療は、プラセボと比較し、アクチグラフで測定した睡眠状態の改善が認められた。この結果は、老人ホーム入所者の睡眠状態、疼痛、うつ病をより評価すべきであることを示唆しており、疼痛治療は潜在的に有用な治療であると考えられる」としている。
(鷹野敦夫)
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