長期間の宇宙滞在により、視神経乳頭および周囲組織に形態学的な変化がみられることが報告された。米国・ヒューストン大学のNimesh Patel氏らは、国際宇宙ステーションに約6ヵ月間滞在した宇宙飛行士の、飛行前後の光干渉断層撮影(OCT)のデータを後ろ向きに解析し、長期間の無重力状態曝露により視神経乳頭および周囲組織の乳頭浮腫状変化が生じていることを明らかにした。著者は、「今回検討した定量化法は、宇宙飛行による長期的な視神経乳頭の変化と宇宙飛行士のための対策、および地球上での乳頭浮腫の原因の評価に役立つだろう」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年1月11日号掲載の報告。
研究グループは、視神経乳頭および周囲組織の変化を定量化する方法を開発することを目的に、飛行前後の視神経乳頭領域のOCTデータを後ろ向きに解析した。解析は、飛行前と対照群との比較と、飛行前と飛行後との比較の2回に分けて行った。
参加者は、過去に約6ヵ月間、国際宇宙ステーションに滞在し、飛行前後のOCTデータがある宇宙飛行士15例(飛行前の平均[±SD]年齢48.7±4.0歳)。すべての宇宙飛行士のデータは、NASA Lifetime Surveillance of Astronaut Healthより得た。対照群は、眼症状の既往歴ならびに無重力状態に曝露された経験のない43例で、対照群のデータはすべてヒューストン大学にて測定した。アルゴリズムの開発とデータ解析は、2012~15年に行われた。
OCTデータの分析には、カスタムMATLABプログラム(MathWorks)を用い、手動で描出したBruch membrane opening(BMO)をすべての形態学的な測定の基準とした。網膜色素上皮の位置はBMOの中央から2mmとし、BMO高を算出。全体および象限の全網膜厚と網膜神経線維層(RNFL)厚は、BMOに対応した楕円環状領域に対して算出し、標準的な乳頭周辺の円形スキャンを用いRNFL厚と脈絡膜厚を定量化した。
主な結果は以下のとおり。
・BMOは、健常対照者と比較し飛行前の宇宙飛行士群において陥凹が認められ、長期間の無重力状態曝露後にさらに深くなった(変化量中央値:-9.9μm、差の95%信頼区間[CI]:-16.3~3.7、p=0.03)。
・長期間滞在後、全網膜厚は1,000μmまで、RNFLは500μmまで増し(BMOを基準)、RNFL厚は中央値で2.9μm増したが(差の95%CI:1.1~4.4、p<0.01)、脈絡膜厚には変化がなかった(変化の中央値:9.3μm、差の95%CI:-12.1~19.6、p=0.66)。
(ケアネット)