欧米では、低い社会経済的地位(SES)と認知症との関連は生活習慣病(糖尿病)を介すると報告されている。しかし、わが国では低SESと認知症の関連は研究されていない。今回、敦賀看護大学(福井県)の中堀 伸枝氏らの研究から、低SESと認知症の間のメディエーターとして、生活習慣病の役割はきわめて小さいことが示唆された。BMC Geriatrics誌2018年4月27日号に掲載。
本研究は、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた後ろ向き症例対照研究である。富山県在住の65歳以上(入院および非入院)の人をサンプリングレート0.5%で無作為に選択、うち1,303人が参加に同意した(回答率84.8%)。全体として、認知症137人および認知症ではない対照1,039人を同定した。必要に応じて、参加者と家族または代理人との構造化インタビューを実施し、参加者の病歴、生活習慣(喫煙および飲酒)、SES(学歴および職歴)を調査した。Sobel検定を用いて、低SESが生活習慣病を介した認知症の危険因子である可能性を調べた。
主な結果は以下のとおり。
・認知症のオッズ比(OR)は、低学歴(6年以下)の参加者で高学歴の参加者より高く(年齢・性別での調整OR:3.27、95%CI:1.84~5.81)、また、事務の職歴より肉体労働の職歴を持つ参加者で高かった(年齢・性別での調整OR:1.26、95%CI:0.80~1.98)。
・職歴について調整後、低学歴の参加者における認知症のORは3.23~3.56であった。
・以前の習慣的な飲酒歴および糖尿病・パーキンソン病・脳卒中・狭心症/心血管疾患の病歴が、認知症リスクを増加させることが認められた。
・学歴は、飲酒、喫煙、糖尿病、パーキンソン病、脳卒中、心血管疾患に関連していなかった。
・職歴は、糖尿病および脳卒中に関連していた。
・低学歴と認知症の関連における糖尿病の役割は、きわめて限られていることが示された。
(ケアネット 金沢 浩子)