きっちり飲める降圧薬は2剤まで? 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/05/28 高血圧症治療に対する医師の満足度は、2014年度時点で98.9%1)と高いにもかかわらず、降圧目標達成率は、2013年の研究によると男性30%、女性40%と低いことが報告されている2)。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は「医師および高血圧患者の高血圧治療に対する意識の実態調査」を実施し、その結果は医学雑誌「血圧」に調査研究として掲載された3)。 調査の結果、医師と患者の間で、治療説明の認識にずれが存在する可能性が示唆された。また、約半数の患者は薬剤を減らしたいと考えており、およそ70%の患者は、正しく服用できる降圧薬は多くても2剤までと答えている。患者は、よりシンプルでわかりやすい治療を求めている。 本研究は、1~3すべての条件を満たす医師321名(1.掲げる診療科名が循環器内科、代謝・内分泌科あるいは一般内科、2.1ヵ月間の高血圧症診察患者数が100例以上、3.30歳以上)と、1~3すべての条件を満たす高血圧症患者1,000例(1.高血圧症のため医療機関に2回以上通院したことがあり、現在も定期的に通院している、2.高血圧症治療の目的で薬物治療中、3.40歳以上)を対象とした、インターネットによる全国調査。なお、患者の抽出に際しては、事前の高血圧患者の調査分布に基づき、降圧薬配合剤服用中の患者200例、降圧薬単剤服用中の患者300例および降圧薬2剤以上を併用している患者500例となるように調整した。 主な結果は以下のとおり。 ≪診断や治療に関して≫ ・初診時に「治療の目的」を説明したと86%の医師が回答したのに対し、説明されたと答えた患者は39%だった。説明を受けていない、あるいは覚えていないと答えた患者は23%存在した。 ・処方決定前に治療選択肢を説明したと49%の医師が回答したが、患者での認識は18%だった。全体で54%の患者が、処方決定前に治療選択肢の説明を望んでいた。 ・「降圧目標値について説明した」と95%の医師が回答したのに対し、44%の患者は説明を受けていない、あるいは覚えていないと回答した。 ≪残薬と服薬アドヒアランスに関して≫ ・服薬アドヒアランスを重視する割合は、医師が78%であったのに対し、患者は48%と両者の間に乖離がみられた。 ・薬剤数を減らしたいと考えている患者は48%存在し、とくに3種類以上服用している患者でその傾向が強いという結果だった。 ・良好な服薬アドヒアランスで服用できる薬剤数について、医師は43%が「2種類まで」、36%が「3種類まで」と回答したのに対し、患者は33%が「1種類まで」、34%が「2種類まで」と、患者が考える薬剤数は、医師が考えているより少ないという結果だった。 本調査研究の筆者である檜垣 實男氏(愛媛大学名誉教授/医療法人 仁友会 南松山病院 病院長)は、「高血圧患者さんと医師のコミュニケーションギャップを改善し、患者さんが高血圧治療の目的や治療選択肢について理解し、医師と共に治療に向き合える体制を作ることが大切です。患者さんの服薬アドヒアランス向上のためには、配合剤という選択肢も有効であると考えられ、今後高齢化が進む中で、残薬を減らし血圧をしっかりと管理していくことが、心血管イベント抑制や、医療経済的な貢献にもつながると期待しています」とコメントしている。 ■参考文献 1)平成27年度(2015年度)国内基盤技術調査報告書「60疾患の医療ニーズ調査と新たな医療ニーズII」【分析編】. 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団. 2016. 2)Miura K, et al. Circ J. 2013;77:2226-2231. 3)西村誠一郎ほか. 血圧. 2018;25:364-376. ■参考 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース (ケアネット 堀間 莉穂) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 高血圧患者数約2,700万人の9割に治療薬が処方/日本高血圧学会 医療一般(2022/06/17) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09) 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08) 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06) Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)