2000~16年に発表された熱中症関連文献のレビューによると、熱中症90例のうち、約2割が死亡、約2割が長期の神経学的後遺症を患っていたことが、オーストラリア・Royal Adelaide HospitalのEmily M. Lawton氏らによる調査で明らかになった。また、神経学的障害のある患者の7割以上が長期の小脳機能障害を有しており、小脳構造が熱に弱いことが示唆された。さらに、永久的神経学的障害を認めた症例の多くが若くて健康だったことから、著者らは、「年齢や合併症に関係なく、熱中症の予防および治療に積極的な介入が必要である」と強調した。Emergency medicine Australasia誌オンライン版2018年5月31日号の報告。
熱中症の23.3%が長期の神経学的後遺症を患っていた
地球温暖化の影響で、気温が上昇している。暑さが熱中症などの有害な健康被害をもたらすことはよく知られているが、熱中症による後遺症などの長期的な影響についての報告は少ない。
そのため、本研究では、2000~16年に発表された熱中症関連の医学文献(症例報告)をOvid MedlineおよびEmbaseで検索し、熱中症の神経学的な転帰について調査した。
熱中症による後遺症などの長期的な影響を調査した主な結果は以下のとおり。
・関連性が高いと判断された論文が71件あり、90例について検討を行った。
・急性神経症状を呈した症例が100%、非神経学的症状を呈した症例が87.8%であった。
・44.4%が完全回復、23.3%が死亡、23.3%が長期の神経学的後遺症を患っていた。8.9%は長期のフォローアップができなかった。
・死亡および神経学的後遺症を有する患者の57.1%は、合併症がなかった。
・神経学的障害には、運動機能障害66.7%、認知障害9.5%、運動・認知障害19%、その他4.7%が含まれていた。
・神経学的障害のある患者の71.4%が長期の小脳機能障害を有していた。
・神経学的障害のある患者で転帰が判明している生存者のうち、永久的神経学的障害を認めたのは34.4%で、その多くは若くて健康な症例であった。
(ケアネット 武田 真貴子)