ホルモン抵抗性乳がんへのアベマシクリブ+フルベストラント(MONARCH-2)/ASCO2018 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/07/12 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行する。選択的CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは、1日2回連日投与される経口薬であり、CDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされると考えられる。 アベマシクリブは、HR陽性HER2陰性の進行乳がん患者において、単剤(MONARCH-1試験)、フルベストラントとの併用(MONARCH-2試験)、非ステロイド性アロマターゼ阻害(NSAI)との併用(MONARCH-3試験)による有効性および忍容性が示されている。ベルギー・University Hospitals LeuvenのPatrick Neven氏は、今回、MONARCH-2試験の参加者のうち、閉経前/閉経期の患者における有効性と安全性のデータを報告した。 MONARCH-2試験は、HR陽性HER2陰性進行乳がん女性において、アベマシクリブ+フルベストラントとフルベストラント単剤の有用性を比較する国際的な二重盲検プラセボ対照ランダム化第III相試験である。1ラインの術前内分泌療法中または術後内分泌療法中か終了後1年以内に再発し、化学療法歴のない患者を対象とした。 被験者は、アベマシクリブ(150mg[試験開始時は200mg、後に修正]、1日2回、経口、連日投与)+フルベストラント(500mg、筋肉内注射、1サイクルを28日とし、1サイクル目のDay1、15、2サイクル目以降はDay1)またはプラセボ+フルベストラントを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治験医判定による無増悪生存(PFS)とした。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、臨床的有用性率(CBR)、安全性などであった。 本試験には、2014年8月~2015年12月に、日本を含む19ヵ国142施設に669例が登録された。このうち、閉経前/閉経期の患者は114例で(年齢60歳未満で自然月経がみられる患者はGnRHアゴニストの投与が求められた)、アベマシクリブ群が72例、プラセボ群は42例だった。追跡期間中央値はそれぞれ20.4ヵ月、19.6ヵ月。ベースラインの年齢中央値は、アベマシクリブ群が46歳、プラセボ群は47歳であり、アジア人がそれぞれ70.8%、57.1%、白人が19.4%、38.1%を占めた。 全体のITT集団(669例)における治験医判定のPFS期間中央値は、アベマシクリブ群が16.4ヵ月と、プラセボ群の9.3ヵ月よりも7.1月延長した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。独立中央判定委員会による盲検下の評価でも、アベマシクリブ群にPFSのベネフィットが認められた(HR:0.460、95%CI:0.363~0.584、p<0.000001)。 閉経前/閉経期集団(114例)の治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったが、プラセボ群の10.5ヵ月との間に有意な差が認められた(HR:0.446、95%CI:0.264~0.754、p<0.002)。独立中央判定委員会の盲検下の評価でも、アベマシクリブ群でPFSのベネフィットが確認された(HR:0.432、95%CI:0.236~0.793、p<0.005)。また、アロマターゼ阻害薬の投与歴のない閉経前/閉経期集団(92例)における治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったものの、プラセボ群の11.3ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.451、95%CI:0.245~0.833、p=0.009)。 閉経前/閉経期集団におけるアベマシクリブ群の腫瘍縮小効果は深く、かつ高度であった。すなわち、ORRは、ITT集団(114例)ではアベマシクリブ群が43.1%(CR:2.8%)、プラセボ群は19.0%(CR:0%)、測定可能病変例(79例)ではそれぞれ60.8%(CR:0%)、28.6%(CR:0%)であった。また、CBRは、ITT集団がそれぞれ77.8%、69.0%、測定可能病変例では、74.5%、71.4%であった。Neven氏は、「われわれが知る限り、これは内分泌療法抵抗性乳がんにおける最も良好な結果である」と指摘している。 閉経前/閉経期集団における有害事象による治療中止は、アベマシクリブ群が4例(5.6%)、プラセボ群は0例、減量はそれぞれ28例(39.4%)、1例(2.4%)にみられた。重篤な有害事象は、アベマシクリブ群が8例(11.3%)、プラセボ群は2例(4.8%)にみられた。 アベマシクリブ群では治療関連有害事象が98.6%に発現し、そのうちGrade 3が56.3%、Grade 4は5.6%であった。アベマシクリブ群で頻度の高い有害事象として、下痢(87.3%)、好中球減少(59.2%)、白血球減少(43.7%)などがみられた。Grade 3の下痢の割合は11.3%で、Grade 4は認めず、好中球減少はそれぞれ39.4%(発熱性好中球減少の1例を含む)、2.8%に発現した。 Neven氏は、「アベマシクリブ+フルベストラント+GnRHアゴニスト療法は、閉経前/閉経期の患者において、実質的なPFSの改善と腫瘍縮小効果をもたらし、化学療法の導入を遅らせることが示された。下痢は管理可能で、可逆的であり、GnRH追加による新たな有害事象は認めなかった」とまとめた。 ■参考 ASCO2018 Abstract ※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら (ケアネット) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 乳がんアジュバント、アベマシクリブ+内分泌療法が予後改善(monarchE)/ESMO2020 医療一般(2020/10/02) monarchE試験で報告されたアベマシクリブの3つの重要なAE、その特徴と転帰/ESMO BREAST 2021 医療一般(2021/05/17) アベマシクリブ+フルベストラント、HR+/HER2-乳がんのOS延長(MONARCH-2)/ESMO2019 医療一般(2019/10/02) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] COPDの3剤配合薬、定量噴霧吸入器vs.ドライパウダー吸入器/BMJ(2025/01/22) 日本における片頭痛診療の現状、今求められることとは(2025/01/22) 乳がん診断後の手術遅延、サブタイプ別の死亡リスクへの影響(2025/01/22) 自己主導型のCBTはアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効(2025/01/22) コーヒーやお茶の摂取は頭頸部がんのリスクを下げる?(2025/01/22) 高齢患者の抗菌薬使用は認知機能に影響するか(2025/01/22) 出産後の抜け毛の量が育児中の不安に独立して関連(2025/01/22) [ あわせて読みたい ] アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09) 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08) 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06) Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17) 診療所の売れ行きに直結する「概要書」の大切さ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第39回(2022/05/09) 医療マンガ大賞2021「たった一時間されど一時間」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/04/18) 「急ぎ」のお宝承継をゲットできる医師は…?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第38回(2022/04/11)