ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行する。選択的CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは、1日2回連日投与される経口薬であり、CDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされると考えられる。
アベマシクリブは、HR陽性HER2陰性の進行乳がん患者において、単剤(MONARCH-1試験)、フルベストラントとの併用(MONARCH-2試験)、非ステロイド性アロマターゼ阻害(NSAI)との併用(MONARCH-3試験)による有効性および忍容性が示されている。ベルギー・University Hospitals LeuvenのPatrick Neven氏は、今回、MONARCH-2試験の参加者のうち、閉経前/閉経期の患者における有効性と安全性のデータを報告した。
MONARCH-2試験は、HR陽性HER2陰性進行乳がん女性において、アベマシクリブ+フルベストラントとフルベストラント単剤の有用性を比較する国際的な二重盲検プラセボ対照ランダム化第III相試験である。1ラインの術前内分泌療法中または術後内分泌療法中か終了後1年以内に再発し、化学療法歴のない患者を対象とした。
被験者は、アベマシクリブ(150mg[試験開始時は200mg、後に修正]、1日2回、経口、連日投与)+フルベストラント(500mg、筋肉内注射、1サイクルを28日とし、1サイクル目のDay1、15、2サイクル目以降はDay1)またはプラセボ+フルベストラントを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治験医判定による無増悪生存(PFS)とした。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、臨床的有用性率(CBR)、安全性などであった。
本試験には、2014年8月~2015年12月に、日本を含む19ヵ国142施設に669例が登録された。このうち、閉経前/閉経期の患者は114例で(年齢60歳未満で自然月経がみられる患者はGnRHアゴニストの投与が求められた)、アベマシクリブ群が72例、プラセボ群は42例だった。追跡期間中央値はそれぞれ20.4ヵ月、19.6ヵ月。ベースラインの年齢中央値は、アベマシクリブ群が46歳、プラセボ群は47歳であり、アジア人がそれぞれ70.8%、57.1%、白人が19.4%、38.1%を占めた。
全体のITT集団(669例)における治験医判定のPFS期間中央値は、アベマシクリブ群が16.4ヵ月と、プラセボ群の9.3ヵ月よりも7.1月延長した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。独立中央判定委員会による盲検下の評価でも、アベマシクリブ群にPFSのベネフィットが認められた(HR:0.460、95%CI:0.363~0.584、p<0.000001)。
閉経前/閉経期集団(114例)の治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったが、プラセボ群の10.5ヵ月との間に有意な差が認められた(HR:0.446、95%CI:0.264~0.754、p<0.002)。独立中央判定委員会の盲検下の評価でも、アベマシクリブ群でPFSのベネフィットが確認された(HR:0.432、95%CI:0.236~0.793、p<0.005)。また、アロマターゼ阻害薬の投与歴のない閉経前/閉経期集団(92例)における治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったものの、プラセボ群の11.3ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.451、95%CI:0.245~0.833、p=0.009)。
閉経前/閉経期集団におけるアベマシクリブ群の腫瘍縮小効果は深く、かつ高度であった。すなわち、ORRは、ITT集団(114例)ではアベマシクリブ群が43.1%(CR:2.8%)、プラセボ群は19.0%(CR:0%)、測定可能病変例(79例)ではそれぞれ60.8%(CR:0%)、28.6%(CR:0%)であった。また、CBRは、ITT集団がそれぞれ77.8%、69.0%、測定可能病変例では、74.5%、71.4%であった。Neven氏は、「われわれが知る限り、これは内分泌療法抵抗性乳がんにおける最も良好な結果である」と指摘している。
閉経前/閉経期集団における有害事象による治療中止は、アベマシクリブ群が4例(5.6%)、プラセボ群は0例、減量はそれぞれ28例(39.4%)、1例(2.4%)にみられた。重篤な有害事象は、アベマシクリブ群が8例(11.3%)、プラセボ群は2例(4.8%)にみられた。
アベマシクリブ群では治療関連有害事象が98.6%に発現し、そのうちGrade 3が56.3%、Grade 4は5.6%であった。アベマシクリブ群で頻度の高い有害事象として、下痢(87.3%)、好中球減少(59.2%)、白血球減少(43.7%)などがみられた。Grade 3の下痢の割合は11.3%で、Grade 4は認めず、好中球減少はそれぞれ39.4%(発熱性好中球減少の1例を含む)、2.8%に発現した。
Neven氏は、「アベマシクリブ+フルベストラント+GnRHアゴニスト療法は、閉経前/閉経期の患者において、実質的なPFSの改善と腫瘍縮小効果をもたらし、化学療法の導入を遅らせることが示された。下痢は管理可能で、可逆的であり、GnRH追加による新たな有害事象は認めなかった」とまとめた。
■参考
ASCO2018 Abstract
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(ケアネット)