日本紅斑熱とツツガムシ病は、ともにダニが媒介する感染症で、日本を含むアジアの特定の地域でみられる。治療が遅れると重症化し、死亡することもあるため早期の診断が重要だが、両者の臨床的・疫学的特徴とその違いについて正確なことは明らかになっていなかった。長崎大学熱帯医学研究所/亀田総合病院の山藤 栄一郎氏らは、この2つのリケッチア症が同時に流行している、世界的にもまれな地域の1つである千葉県南房総で、2004~15年の間に3つの医療機関を受診した患者のデータを分析した。Emerging Infectious Diseases誌2018年9月号掲載の報告。
主な結果は以下のとおり。
・リケッチア症が疑われた661例のうち、31例の日本紅斑熱患者、188例のツツガムシ病患者、および97例の非リケッチア症患者が同定され、本研究に組み入れられた。
・日本紅斑熱は4~10月に、ツツガムシ病は11~12月に多く発生していることが明らかになった。
・日本紅斑熱とツツガムシ病の患者は、非リケッチア症患者と比較して有意に年齢が高く、雑木林の近くに居住する割合が高かった。
・空間分析の結果、日本紅斑熱とツツガムシ病の発生地域は同じ南房総地域の中でもほとんど重ならなかった。
・臨床的特徴としては、どちらの病気でも症状や身体所見には“3徴”と呼ばれる発熱、発疹、ダニの刺し口という共通点がある一方で、ツツガムシ病と比較して日本紅斑熱では、出血を伴う発疹(紫斑)、手のひらや足の裏の発疹、低ナトリウム血症、臓器障害、および治療後の解熱の遅れが多くみられた。
山藤氏は、「“3徴”について、リケッチア症患者全体で25%以上が医療機関受診時に発熱を認めず、50%以上が発疹やダニの刺し口に気づいていなかったことも明らかになった。さらに診断に使用される血清検査は、感染の急性期には正しく診断できないことが多いため、回復期と合わせて検査・診断することが不可欠なことが明らかになった。つまり、これらの病気を疑われず検査されない、あるいは疑われて検査しても診断されなかった例は少なくない、と推測される。患者にダニに刺されたという自覚が無くても、積極的に疑って問診・診察することが重要だと考えられる。なお、ツツガムシ病は地域によって主な血清型(=ベクター、重症度)が異なるため、東北地方などの他地域に、本研究結果をそのまま当てはめることはできない」とまとめている。
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(ケアネット 遊佐 なつみ)