認知症と診断された患者における自殺念慮の存在、促進因子、保護因子について、英国・プリマス大学のGary Hodge氏が、文献レビューおよびデータ統合を行った。本レビューでは、どのような因子が自殺念慮のリスク上昇に影響を及ぼすかを考慮し、認知症での死亡を議論する際、選択の道徳性と倫理性への反映を試みた。Dementia(London, England)誌オンライン版2018年9月14日号の報告。
認知症における自殺念慮に関連するデータを判断するため、批判的な解釈統合モデルを用いた。サンプルフレームを用いて、抽出されたデータの品質と関連性を評価し、批判的な解釈統合を構築した。8つの主要論文よりデータ抽出を行った。
主な結果は以下のとおり。
・本レビューおよびデータ統合は8つの統合結果から構築され、2つの結論が導き出された。
・第1に、認知症および臨床的うつ症状と診断された患者において、自殺念慮のリスクが大幅に増加していた。
・第2に、認知症と診断された患者とその家族において、終末期の話し合いが一般的に行われていた。
著者らは「死、とくに自殺念慮についての話し合いは難しいテーマであるが、認知症診断により複雑さが増したとしても、死についての話し合いは可能である。しかし、これらの会話は、個別化と慎重さが必要である。そして、本人の病前希望、事前の決定や選択を尊重し、“生きる権利”と“死ぬ権利”について、継続的に話し合う必要もある」としながら、「これらの話し合いを始める前に、新規および早期の認知症診断などの自殺念慮のリスク要因やうつ病などの精神的な合併症を認識し、対処する必要がある」としている。
■関連記事
なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか
認知症における抗コリン薬負荷と脳卒中や死亡リスクとの関連
認知症者への向精神薬投与は死亡率を高めているか
(鷹野 敦夫)