認知症における抗コリン薬負荷は、認知機能障害および認知機能低下と関連している。しかし、これまでの研究では、脳卒中などの重大な有害アウトカムに対する抗コリン薬の影響については検討されていなかった。スウェーデン・ストックホルム大学のEdwin C. K. Tan氏らは、各認知症サブタイプにおける抗コリン薬の認知負荷(ACB:anticholinergic cognitive burden)と脳卒中や死亡リスクとの関連について調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2018年7月21日号の報告。
2008~14年のスウェーデン認知症レジストリ(Swedish Dementia Registry :SveDem)から抽出した、脳卒中の既往歴のない認知症者3万9,107例を対象としたコホート研究として実施した。スウェーデン処方薬レジストリ(Swedish Prescribed Drug Register)、スウェーデン国民患者レジストリ(Swedish National Patient Register)、スウェーデン総人口レジストリ(Swedish Total Population Register)よりデータを抽出した。時間依存的ACBスコアと脳卒中および全死因死亡のリスクに関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、競合リスク回帰モデルを用いて算出した。
主な結果は以下のとおり。
・平均フォローアップ期間2.31年(標準偏差:1.66)の間に、脳卒中または死亡した患者は、1万1,224例(28.7%)であった。
・抗コリン薬未使用者と比較し、ACBスコア1(HR:1.09、95%CI:1.04~1.14)およびACBスコア2以上(HR:1.20、95%CI:1.14~1.26)では、脳卒中および死亡の複合アウトカムの発症リスクが増加した。
・各認知症タイプで層別化すると、アルツハイマー型認知症、混合型認知症、血管性認知症において、その関連は有意なままであった。
著者らは「認知症における抗コリン薬の使用は、脳卒中および死亡リスクを増加させる可能性がある。これには、用量反応関係が認められた。認知症者に抗コリン薬を処方する際には、慎重に検討する必要がある」としている。
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(鷹野 敦夫)