眼瞼の脂腺がん(SC)に対し、モース顕微鏡手術(Mohs micrographic surgery:MMS)または広範切除術(wide local excision:WLE)のどちらを実施するかについては、さまざまな議論がある。中国・上海交通大学医学院のChuandi Zhou氏らは後ろ向きコホート研究を行い、眼窩病変のないSCに対してはMMSのほうが局所再発を抑制できるものの、MMSは転移やがん関連死といった長期アウトカムには影響を及ぼさないことを明らかにした。なお、パジェット病による上皮内腫瘍を伴う患者に対しては、補助療法を要する可能性が示唆された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年1月9日号掲載の報告。
研究グループは、眼瞼のSCに対する初回治療としてのMMSとWLEにおける局所再発、転移およびがん関連死を比較する目的で、多施設共同後ろ向きコホート研究を行った。
適格患者全例における再発、転移およびがん関連死に関する要因を診療記録から割り出し、すべての交絡因子を調整した後、Cox回帰分析により初回手術の予後への影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は360例で、初回手術としてMMSを受けた患者は115例(31.9%)、WLEを受けた患者は245例(68.1%)であった。
・追跡調査期間中央値は60.0ヵ月で、局所再発と転移はそれぞれ、MMS群18例(15.7%)、9例(7.8%)、WLE群97例(39.6%)、38例(15.5%)であり、転移を有するSCでの死亡は、それぞれ6例(5.2%)、21例(8.6%)であった。
・Cox回帰分析の結果、WLE群と比較してMMS群の局所再発は有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.24~0.73、p=0.002)が、転移率(HR:1.38、95%CI:0.60~3.18、p=0.453)と、がん関連死(HR:1.70、95%CI:0.59~4.93、p=0.329)は同等であった。
・ただし、この有益性はパジェット病による上皮内腫瘍では認められなかった(HR:1.73、95%CI:0.37~8.21、p=0.488)。
(ケアネット)