認知症患者の行動と心理症状(BPSD)に対する薬理学的および非薬理学的治療の有効性、安全性を比較するため、中国・China Medical UniversityのBoru Jin氏らは、ランダム化データより直接的および間接的なエビデンスを用いて、検討を行った。Journal of Neurology誌オンライン版2019年1月21日号の報告。
BPSDに利用可能なすべての介入のランダム化比較試験(RCT)のみを用いて、システマティックレビューおよびベイジアンネットワーク・メタ解析を行った。RCTは、PubMed、EMBASE、Cochrane library、CINAHLより検索した。有効性アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory(NPI)およびCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いて評価した。安全性アウトカムは、全有害事象(AE)、下痢、めまい、頭痛、転倒、悪心、嘔吐、脳血管疾患について評価した。
主な結果は以下のとおり。
・RCT146件より、BPSD患者4万4,873例が検討に含まれた。
・以下の薬剤のNPIは、プラセボより優れていた。
●アリピプラゾール(MD:-3.65、95%CI:-6.92~-0.42)
●エスシタロプラム(MD:-6.79、95%CI:-12.91~-0.60)
●ドネペジル(MD:-1.45、95%CI:-2.70~-0.20)
●ガランタミン(MD:-1.80、95%CI:-3.29~-0.32)
●メマンチン(MD:-2.14、95%CI:-3.46~-0.78)
●リスペリドン(MD:-3.20、95%CI:-6.08~-0.31)
・以下の薬剤のCMAIは、プラセボより優れていた。
●アリピプラゾール(MD:-4.00、95%CI:-7.39~-0.54)
●リスペリドン(MD:-2.58、95%CI:-5.20~-0.6)
・以下の薬剤の全AEリスクは、プラセボよりも高かった。
●ドネペジル(OR:1.27、95%CI:1.07~1.50)
●ガランタミン(OR:1.91、95%CI:1.58~2.36)
●リスペリドン(OR:1.47、95%CI:1.13~1.97)
●リバスチグミン(OR:2.02、95%CI:1.53~2.70)
著者らは「薬理学的治療は、BPSDの第1選択治療とすべきである。アリピプラゾール、ハロペリドール、クエチアピン、リスペリドンなどの抗精神病薬は有効性を示し、メマンチン、ガランタミン、ドネペジルなどの抗認知症薬は、中程度の効果が認められた。各薬剤の安全性に関しては、許容できると考えられる」としている。
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(鷹野 敦夫)