糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。
本研究では、フラミンガム心臓研究、ロッテルダム研究、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究、Aging Gene-Environment Susceptibility-Reykjavik Study(AGES)およびSacramento Area Latino Study on Aging (SALSA)の5つの集団ベースのコホートの結果を統合した。各コホートにおけるインスリン、メトホルミン、SU類の使用者と非使用者との差について、認知および脳MRIを線形回帰モデルで、また認知低下および認知症/アルツハイマー病リスクを混合効果モデルおよびCox回帰分析を用いて、それぞれ評価した。結果はメタ解析手法を用いて統合され、前向き解析には糖尿病患者3,590例が含まれた。
主な結果は以下のとおり。
・血糖コントロール指標を含む潜在的な交絡因子を調整後、インスリン使用が、認知症発症リスクの増加(pooled HR(95%CI):1.58(1.18~2.12)、p=0.002)および全般的認知機能の大きな低下(β=−0.014±0.007、p=0.045)と関連していた。さらに腎機能を調整し、生活習慣の改善のみで治療された糖尿病患者を除いても、認知症発症との関連は変わらなかった。
・インスリン使用とアルツハイマー病リスクとの間に有意な関連はみられなかった。
・インスリン使用は認知機能および脳MRIに関連していなかった。
・メトホルミンやSU類の使用と、脳機能および構造のアウトカムとの間に、有意な関連はみられなかった。
・コホート間に有意な異質性は示されなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)