せん妄に対する薬理学的介入については、さまざまな調査が行われているが、全体的なベネフィットや安全性はよくわかっていない。台湾・林口長庚紀念医院のYi-Cheng Wu氏らは、せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入に関するエビデンスの評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年2月27日号の報告。
せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入を検討した、2018年5月17日までのランダム化臨床試験(RCT)を、各種データベース(PubMed、Embase、ProQuest、ScienceDirect、Cochrane Central、Web of Science、ClinicalKey、ClinicalTrials.gov)より検索した。事前リストに従いデータを抽出した。PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインを適用し、すべてのメタ解析は、ランダム効果モデルを用いて行った。主要アウトカムは、せん妄患者の治療反応およびせん妄リスクのある患者におけるせん妄発生率とした。
主な結果は以下のとおり。
・合計58件のRCTが抽出された。内訳は、治療アウトカムを比較したRCTが20件(1,435例、平均年齢:63.5歳、男性の割合:65.1%)、予防を検討したRCTが38件(8,168例、平均年齢:70.2歳、男性の割合:53.4%)であった。
・ネットワークメタ解析では、ハロペリドールとロラゼパムの併用が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の治療に最も高い奏効率を示した(オッズ比[OR]:28.13、95%CI:2.38~333.08)。
・せん妄の予防については、ラメルテオン(OR:0.07、95%CI:0.01~0.66)、オランザピン(OR:0.25、95%CI:0.09~0.69)、リスペリドン(OR:0.27、95%CI:0.07~0.99)、デクスメデトミジン塩酸塩(OR:0.50、95%CI:0.31~0.80)が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の発生率を有意に低下させた。
・いずれの薬理学的介入も、プラセボや対照群と比較し、すべての原因による死亡リスクと有意な関連は認められなかった。
著者らは「せん妄の薬理学的介入において、治療にはハロペリドールとロラゼパムの併用、予防にはラメルテオンが最良の選択肢である可能性が示唆された。また、せん妄の治療および予防に対するいずれの薬理学的介入も、すべての原因による死亡率を上昇させなかった」としている。
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(鷹野 敦夫)